’80年代、資生堂のイメージディレクションを担当していたルタンス。
お若い方々はたぶんご存知ないと思いますが・・・
かつて資生堂はこういうお耽美な世界を
世に送り出していたのであります。
それは故・山口小夜子さんが活躍した時代。
彼女はエッセイで
「ルタンスのメイクは数時間もかかります。
その間、モデルは動かずにいます。
煮詰めてドロドロになったファンデーションを塗り、おしろいをはたき、
そうすると自分の皮膚が固まってまるで人形になったような気持ちになります。」
というようなことを語ってらっしゃった。
この表紙の女性モデルの美しいこと、あまりにも人間離れしたその造形。
ルタンスのこの女性像の造形は、1920~30年代のVOGUE誌のイラストを想起させますが、
同時に不思議なオリエンタルの香りも色濃く漂っています。
彼がSHISEIDO PARISの出資で展開する香水のライン
SERGE LUTENS PERFUMESの香りにも
東洋と西洋と中近東の入り混じった、ミステリアスで甘やかな、
スパイスと香料の夢が漂っています。

さて。
なぜいきなりルタンスの話を始めたかというと、いつもお邪魔する香水のサイトで
<ルタンスのカスバの家>の映像が紹介されていたからです。

http://www.wmagazine.com/society/2010/06/serge_lutens_ss#slide=10

たぶんファッション誌からの引用と思われる、この映像。

・・・到底、個人のお家とは思えませんね・・・。
しかし美しい・・・・夢のような住まい。
永住する気にはなれませんけど、アラビアン・ナイトの夢に浸れそうです。


一連の写真の中で、小さな噴水のあるパティオ(中庭)の一枚に添えられた、<香り>への
ルタンスの考えを述べた部分。

チュベローズやダチュラの咲く中庭にて。
(注:どちらも甘くエキゾティックな香りの花。ルタンスは自らの香水ラインでチュベローズをテーマにした香りとダチュラをテーマにした香りを発表しています)

“The real great perfumers are not perfumers,” Lutens says. “They are the bees, the winds, the rivers and other things that carry and mix scents in space.”

「本当に偉大な調香師(香水を作る人)は人間ではありません。蜜蜂や風、水の流れ、
そのほか様々なものたちが(香りを)運び、空間で混ぜ合わせるのです。」

コメント

konynon
2010年5月28日0:26

あぁ…こんな代物が世界のどこかに存在するんですね…

私の知らない世界だったのですが、仰るように夢のような芳香が立ち上るような造形美。

でもやっぱり私なぞは、ここでは生活できないし暮らせないかな(笑)

しばしトリップしてしまいました。
素晴らしく不思議な世界をありがとうございますv

HT
2010年5月28日8:47

ほんと。<代物>という表現がぴったりですよね。
隅々まで依頼主の美的感覚に沿ってつくり上げられた世界。
35年かかっても完璧に作らずにはいられないルタンスの激しさを感じてしまいます・・・。
彼自身もここではほとんどすごさずに郊外のスタジオで働いてらっしゃるようで(笑)
所詮、人間は夢の中では暮らせないものなんでしょうかね?