くすくす笑って、爆笑したかったけど静かなので笑いを抑えるのに苦労しつつ、
・・・・やっぱ泣きました。

菅野美穂の透明感をここまで魅力的に感じたのは初めてかもしれない。
簡素なスカートの裾から覗く足首の華奢さが、なにかとても哀しい。
小池栄子と夏木マリはやっぱり素敵だった。
ほれぼれしてしまう。
おんなそのもの。
菅野とは対照的に、きゅっと締まった筋肉質の足。
寂れた港町の、むき出しの人生を生きるおんなたち、そして時々男たち。
おんなたちは貧困・暴力・浮気にも負けず、そして男たちは皆、夢ばかり見て、
手を伸ばしたとたんに霧散する幻のよう。
逞しく存在感豊かなおんなたちはだから、ひとりのこらず皆、決して手に入ることのない
想像上の男に恋をし、追いかけているように見えた。

以下全然客観的でない個人的感想ですんません(;´∀`)

映像の中で展開される世界が、あまりにも自分が18歳まで育った場所に似ていて、
その意味で冷静ではいられなかった。

亡くなった祖母はちいさなパーマ屋を営んでいて、月何度かそこへ遊びに行くと、
夕暮れ時はホステスさんたちの髪結いタイムでごった返していた。
甘くオリエンタルな香水の匂い、煙草の煙、パーマ液の悪臭、ドライヤーの騒音、
酒と煙草で掠れたハスキーな声。
パーマネント野ばらのお客よりはずっと洗練された女性たちだったけれども、
世間話しながら、時々身の上話まで聞いてる祖母が、なーんとなく商売人ぽくて
苦手だった。
人手がたりないと、近所のスーパーにシャンプーを買いに行かされたものである。
(もちろん単価のやすいやつw)
公務員の父と結婚した母は、たぶん祖母の生業を嫌っていたと思う。
母の実父はふらっと家出していなくなるような男で、私が祖父だと思っていた男性は
実は祖母の再婚相手で、キャバレーでバーテンの仕事の傍ら、
女性相手にダンスしてお金を貰っていたらしい。
母に言わせると『髪結いの亭主』ってやつですw
(そのものズバリの題名のフランス映画がありました)
ほっそりして、派手なネクタイで、髪をポマードで撫で付けた祖父は、子供心に
「なんだかこの人、怪しい。」と思っていたもんですが、とても優しい人でした。
・・・そう、主人公の母の再婚相手の男(宇崎竜童) みたいに。

そしてこの映画のバックグラウンドとしての野山の存在。
おんな達は、いろんなものを人知れずこっそりと草むらに穴を掘って埋める。
それは死んだ猫だったり海亀だったり、野垂れ死んだ亭主の形見だったり、
もしかすると死んだ連れ合いだったりする。
おんなの愛や悲しみ、怒りや後悔の骸を内包した土からじわじわと養分を吸い上げ、
ふりそそぐ南国の陽射しを浴びた草木は、その勢いをいや増すのであります。
刈っても刈っても、半月もすれば元通りに茂ってくる雑草たちの発する
むせ返るような緑の息吹。
速やかに侵食され、朽ち果てかけた草むらの中の荒れ屋。
じーっと聞いていると感覚が麻痺してトリップしそうな、蝉の声のシャワー。

それらが記憶と結びつき、皮膚感として感じられ、いまはもうどこにもない、
心の奥底にひっそりと沈んでいたノスタルジーとしての故郷を思い出させてくれた。

コメント

MAYUKO
2010年6月23日22:59

HT様 こんばんは
野ばら…私は今のところ、コトイチです。

育った環境としては私は…違いますが
あそこに登場する誰かに似た方々とずっと一緒に過ごしてきたような気がする。

わかりすぎるくらいわかるから…おもいっきり笑って…そして泣いたのかも
しれません…。

エグっちゃん…の役…はどうでした?
私がえぐっちゃん史上一番好きかもしれません。
あんな役…特出でもいいから…演じて欲しい…。

HT
2010年6月24日0:33

こんばんは。

野ばらに出てくる人たち・・・。
そして少し前まで日本の田舎のいろんなところにこういう人間関係があったような。
・・・まぁでも、私の経験に普遍性があるとは到底言い難いですネ;
あの突き抜けた明るさは、舞台が高知だってのも大きいかもです。
南国特有の「まぁ、仕方ないか。これも人生や。」的達観。(投げやりともいう)

エグっちゃんの役は、ちょっとハマり過ぎなくらいだと思います。
なんだろう、彼の存在自体、ある意味あの役のまんまな気がしますから・・・。
夢の男、それでいてきちんと肉体の存在感と、匂いたつような色気がある。

私はトンネルのシーンが一番よかったです。
すごく儚くて、とても綺麗なシーンなんですけど、きれいすぎて何か胸がざわめく感じ。
あの感じは、どこかで絶対演じてみて欲しい。