「ぼくのエリ 200歳の少女」の原作です。

先に映画を見てから、これは絶対原作も読まねば!といそいそと購入。

面白いですよ、これ。

永遠に年を取らず、人の生き血を飲まずにはいられない。
太陽に照らされると燃え尽きて灰になる。
ヴァンパイア小説の定番の設定を生かしつつ、
望まぬまま異形の者と化してしまった悲しみと
思春期にさしかかったコドモのゆれ動く内面を繊細に汲み取りシンクロさせ、
疎外された子供たちの惨めな救いようのなさ、無関心で身勝手な大人たちへの絶望感を
静かに降り積もりながら凍りつく北欧の長い冬の閉塞感でつつみこんだ上手さ。

その部分は映画も小説もぴったり同じでした。

ただ小説のほうはよりホラー的色合いが濃くて、描写の過剰な残酷・悲惨さは、
どっちかっていうとB級ホラー作品風味(笑)
忠実に映像化するなら、たぶんハリウッドのほうが得意そう。
(ただし性的タブーに触れる描写もあるので、そこんとこはスルーだろうな)
・・・実際ハリウッドが映画化して、今秋に全米公開されるそうです。
ニューメキシコでロケしたとか。
映画的には全くテイストの違う作品に仕上がってるかもしれないですね。

映像でどんな空気を表現するのか。
小説と同じ設定、同じエピソードを遣いながら、全体の流れをどう組み立てていくか。
小説の物語的骨格がしっかりしているからこその大胆な改編ともいえますし、
映像と文章という媒体の決定的違いも大きいでしょう。

ただあくまで個人的な感想ですが、映画ではオスカルとエリの繊細さやナイーブさが、
御伽話の妖精譚のような味わいを添え、作品を陳腐化からずっと遠ざけていたと思う。
映像作品としての出来の素晴しさを再確認した感もあり。

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先日コメント頂いたモザイク描写とタイトルの欺瞞性について。
原作を読んで思ったこと。

・・・そこのところはたぶん、「小さな恋のメロディ」的に売り出したかったんだろうな、
日本の配給元は。

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