エロティシズムの奥深さと闇に感無量・・・。

第二次大戦中、日本占領下の中国。
抗日組織のスパイとして送り込まれた女が
日本軍の手先として働く特務機関の男を誘惑し暗殺を試みる。
というお話なのですが。

・・・しょーじきスパイ活動とか抗日運動とかはちょっと二の次。

これはですねぇ、性の闇に嵌り込んでゆく男と女の、情念を越えた苦痛と快楽の物語です。
女は最初、清楚な大学生です。
演劇部の先輩に誘われたのをきっかけに、成行きで抗日スパイに仕立て上げられてしまう、
いわば巻き込まれ型の女。
しかし素朴な彼女が体にピッタリしたチャイナドレスを着、真っ赤なルージュを引き、
男を知り、スパイ活動にのめりこんでいくとともにどんどん綺麗になっていく。
細い腰やきゅっとしまった足首にほの暗い色香が漂ってくる。
<蛇のように>疑い深く冷酷な、トニー・レオン演じる男が、女の暗い香りに引き寄せられ、
彼女と二人きりになると無防備に全てをさらけ出し、行為に耽溺していく。

かなり強烈なベッドシーン満載ですが、ドキドキするよりちょっと怖い。
行為が激しすぎて。
お互いを思いやるとか慈しみ合うというよりは、何かから逃避するような、
全てを忘れるためにひたすら没入する不毛なエロス。
や~・・・それにしてもモロだなw
トニー兄さん激し過ぎ。
エクスタシーの表情も快楽より苦痛・生より死を連想させる愛の行為。

たぶんそこがアン・リー監督の狙いなのでしょうけど。

劇中で女が抗日スパイの仲間達に告げる言葉。

彼は蛇のように狡猾で疑い深い。少しでも嘘をつけば見破られる。
だから私は身も心も男との行為に没頭する。
苦しみ悶える私を見て、生きていることを実感するの。
だから私も彼に苦痛と快楽を与えてあげる。

恐るべし。
女のエロティシズムの闇。
しかし最後の最後で情念に溺れてしまった女は破滅する。

トニー・レオンはやっぱり素敵。
女をじっと見つめる目線。タバコを挟んだ指先の繊細そうな動き。
ベッドサイドで誘惑する女を見つめる時、膝の上の手が小刻みに震えていたこと。

トニー兄さん、ただのオサーンなのに映画で見るとめっちゃセクシー@師匠。

まさに真実でございます!

ただひとつ・・・・・。
女優さんの顔といい雰囲気といい、どーしても最後まで好きになれなかった。
垢抜けないっていうのかな~・・・もの足りないんだよな。
コン・リーだったらもう言うことなかったよなぁ。
(年齢的にムリですw)

まぁこれは個人的好みですね。

タイトルは英語訳すると
『LUST、CAUTION』
中国語のタイトルは
『色、戒』
日本語にすると『禁色』ってとこでしょうか?

なぁるほど・・・深いな。


女優さんで思い出した。

今朝めだましでノルウェイ紹介してたけど、やっぱ劇場には行かないかな。
発売当時原作読んで「村上春樹はもういいや。」と思った作品(笑)
だけど、トラン監督だから見るつもりだったんだけど。

あのね、役者さんの<顔>はとても大事だと思います・・・。

コメント

MAYUKO
2010年12月10日23:50

HT様 こんばんは
こういう作品って女優の存在がとてつもなく大事…
私もなんか違う…と思いながら見てました…。

顔と雰囲気はほんと大事…
私はマギー・チャンが好きなんです…トニーの相手役としては…

HT
2010年12月11日0:25

こんばんは!

マギー・チャン!
そうそう、「花様年華」よかったですよねぇ。
チャイナ・ドレスのエロティシズムって胸元・うなじ・腰をピッタリと包み込んで
露出してない部分を想像させるところにあると思うんですよ。
残念ながらタン・ウェイっていう女優さんのそれは薄かった。
ミス・キャストじゃないのかな~、なんて気になってしょうがなかったです;

>顔と雰囲気はほんと大事…

ですよね。
よくそういうのは二の次だ、みたいな。
無闇な演技力信仰?みたいなのあるじゃないですか?
わかってないな~。
なぁんてね(笑)
思っちゃいます、ホントに。