おやぢの妖しい花園。
おやぢ萌え&中世マニア、本マニアの皆様に
絶対の自信を持ってオススメ。

時は魔女狩りが横行する欧羅巴の暗黒時代=中世。
人里離れた北イタリアの修道院で起こった不可解な連続殺人。
鋭い観察力と知性を備えたイギリス人修道士:ウィリアムと
その弟子アドソが
中世のシャーロック・ホームズ&ワトソン(少年だけどw)よろしく次々と謎を解き真相に迫る。

閉鎖された修道院という空間。
当然登場人物の9割は男。しかもおっさん。
フランシスコ・ザビエルみたいな天辺を剃り上げた河童ヘアで、
ものすごく個性的(ぶっちゃけキモ系)。
唯一の若者=アドソはクリスチャン・スレーターで、今イチ美形とは思えず←
ということで、ひたすらウィリアム(ショーン・コネリー)の鋭い知性と素敵なユーモア、
そしてアイリッシュらしい濃ゆめの顔と深みのある声にうっとり・・・。
でも、中世って衛生観念発達してなくてネズミはうようよ、ゴミは捨てまくりで不潔だし、
とても寒そうな修道院なのに全員はだしにサンダルで、
私の嗅覚と触覚は割とリアルに匂いや感触を脳内再生して
「絶対こんなとこで暮らせんわな;」と判断いたしました(笑)

しかし、あまりにもストーリーが面白いのですでに2回見てしまいました。

中世ヨーロッパの生活の全ての拠り処は聖書(もっと言えばキリストの言葉)でした。
当然教会は絶対の権力を持つ存在であります。
その一方、キリストの言葉をどう解釈するかでいくつもの宗派に別れ、
論争しその宗教的正当性を争う状況もありました。
イギリス人の修道士:ウィリアムがやってきた北イタリアのベネディクト修道院は
「笑いとユーモアは信仰心を薄れさせるキリスト教の敵」とする考え方のもと
ヨーロッパ最大とも噂される蔵書を、修道院長自ら塔の中の秘密の書架に隠匿し
限られた人間以外の閲覧を厳しく禁じていました。
本はおろかクリックひとつで世界中の情報にアクセス可能な現代では想像し難い世界。
中世の書物は羊の革をなめしたページに貴石を砕いた粉や貴重な染料を使って
気の遠くなるような時間をかけ造本されていました。
学校など存在せず、識字率も極端に低かったこの時代、本は究極のぜいたく品。
その情報にアクセスできるのは特権階級のみ。
同時に必要以上の情報を知り、自らの目で世界を見ようとするものは常に
「異端者」「魔法使い」と断罪され、火あぶりになる危険性と隣あわせでした。
それを百も承知で数々の謎を解き、ついに「禁断の図書室」へと足を踏み入れ
貴重な本の山を見つけたウィリアムの悦び。

「見ろ!私たちは今ヨーロッパ世界最大の図書室にいるんだ!」

「禁断の図書室」はまさに紀元前からの人間の知が蓄えられた巨大な脳。
今風に言えば世界最大のスーパーコンピューターの内部だったのです。

『知識とユーモアは信仰心を揺るがす』

鋭い知性と洞察力、そしてユーモアを愛するウィリアムにとって、そこはまさに
「夢の図書室」でした。
未来永劫続くキリスト教支配を望み、変化を恐れる修道院長にとっては混乱をもたらす
「バベルの塔」そのもの。

二人の鮮やかな対比は知性とは何か、知ること・信じることとは何か、という
人間の思考にまつわる哲学的な命題を投げかけているようでした。

なぁんてロマンチックなストーリーだろう(人´∀`).☆.。.:*・゚

おやぢの妖しい花園は深読み自由自在のからくり屋敷でもあったのです。

さぁて。
もう一回みなくちゃ。

コメント

nophoto
takの木管理人
2010年12月19日11:54

こんにちは。おひさしぶりです。
「薔薇の名前」、いいっすねー・・・・・。ショーンおぢ好きには必見の作品です。(笑)
「ダヴィンチコード」とか、あの手の歴史宗教ミステリものの走りだと言われている認識があります。

私は、ショーンおぢチェックと、当時、少しエッチングの宗教画とかドロップキャップ装飾文字とかに興味があってこの作品を見ました。
でも、確か、聖書はすべて手書きで書き写すというものでしたっけ?で、ヒ素がどうのとか・・・・。
仏教も写経の精神がありますし、チベット教やイスラムも基本、聖典は書き写すものだったような。
文字=知識=精神というものが、昔の人ほど密接で魔術的な存在でもあったのかも知れませんね。
キリスト教にも自分を戒める行為をする流派があるというのを初めて知ったのもこの作品ででした。
日本は修行と呼ばれる、自虐的(というと語弊がありますが)行為をするのは、まあ当り前というか良く知られていますが、キリスト教にもそういう苛烈な規律を課すものがあるということを知らなかったもので。・・・・

ちょっと禍々しくはありますが、クリスマス向きな作品チョイスとは言えるかもですね。(笑)

HT
2010年12月19日14:19

こんにちは♪
この作品のショーンはマジ素敵すぎます!
レイダース・最後の聖杯(リバー!(つД`)・゜・)のインディ父も良かったすね。

>聖書はすべて手書きで書き写すというものでしたっけ?
>仏教も写経の精神がありますし、チベット教やイスラムも基本、聖典は書き写すものだったような。

そうです。ヨーロッパで活版印刷が誕生するのはもう少しあとの時代になります。
手で書き写す、という行為はおそらく尊い文章を一字一句間違えずに自分のものにするのも目的のひとつではないでしょうか?
<字が書ける>だけでも、大変な知的作業だったに違いありません←当時

キリスト教ももとはといえば中東に生まれたローカルな存在に過ぎなかったわけで・・・。
当時の時代背景にマッチして爆発的に流行し、ヨーロッパの辺境にまで到達したわけですが、
その伝播期においては、もともとの土着信仰と結びついた様々なバリエーションが見られたようです。
難行苦行と結びついたキリスト教のバリエーションとしてパッと思いつくのは比較的歴史は浅いですけれど、中南米のマリア信仰なんかもそうですね。


>ちょっと禍々しくはありますが、クリスマス向きな作品チョイスとは言えるかもですね

設定が1327年の年末だったみたいですw
クリスマス向きかな~(笑)
ムスコは豚の屠殺シーンや検視による解剖シーンで
「気持ち悪い~~~~~!!!!」とおびえておりました(;´∀`)


nophoto
明石
2010年12月24日11:12

「薔薇の名前」観ました~
“禁断の図書室”を探し当てたウィリアムの喜悦の叫びが印象的でした。

>貴石を砕いた粉や貴重な染料を使って
 そうなんですね~鮮やかな赤などの色彩が目に焼き付きました。
 人体の中に沢山の人間の素(?)があるような絵図とか、すごく面白かった。

迷宮のような塔の中でランプを頼りにお互いの居場所を探し合うウィリアムとアドソのシーン。
塔内に響くウィリアムの声。あれは、どんな音楽をもってくるよりよかったのでは

やっぱり声の魅力って大事だな~
声(話し方を含め)の魅力って人間性の豊かさを感じさせる気がして。
最後のほうのシーンも含め、全編を通じてショーン・コネリーのユーモアとウィットを感じさせる存在感が際立ってました。

そして、全編に充満する「匂う感じ」と、要所要所で際立つ強い匂い。
土や血や蝋燭の火や…匂いに重厚感があるようにさえ感じました。
それも映像の力なのかなぁ。
薬草が絡んでくるシーンを見て、
錬金術師が薬剤師を兼ねていることもあったこと、それが調香師にもつながっていると聞いたことを思い出しました。
キリスト教会の権力が絶大な中世において、錬金術師の仕事は自然科学的な「真理」に近づくことのできる貴重な道だったのかもしれない、それと同様のことが写本絵師や飜訳師にも言えるのかもしれないと思いました。

殺人事件の謎解きはあっけらかんとした印象でしたが(爆)
「薔薇の名前」というタイトルの謎は、私にとっては深まってしまいました…

HT
2010年12月24日12:57

こんにちは。

>やっぱり声の魅力って大事だな~

大事ですよ。
私は基本吹替えはダメなんです。字幕派。
声はその人の肉体とパーソナリティーに結びついた存在だと思っているので・・・。
DVDの特典映像は見ましたか?
一部ドイツ語の吹替えシーンがあったけど(プロデューサーがドイツ人)やっぱペラいw


>中世において、錬金術師の仕事は自然科学的な「真理」に近づくことのできる貴重な道
>同様のことが写本絵師や飜訳師にも言えるのかもしれないと思いました

錬金術師=化学者ですね、当時の。
化学=chemistryは錬金術=alchemyが語源だそうです。
当時、自然界に存在しないものを自らの手で作り出すことは即<悪魔の業>と弾劾される危険性があったはず。
現在においても化学(科学)の発達は時に倫理観を揺るがす要素を含んでいることを考えると、
今も昔もchemistryはalchemyとは無縁ではないのかもしれません(←主観)
写本絵師や翻訳師はそれほど背徳の匂いwはしませんが・・・文字や絵画をどう解釈するかで
自分の目で世界を見ようと志す者にとっては、同じ意味合いがあったかもしれませんね。


>「薔薇の名前」というタイトルの謎は、私にとっては深まってしまいました…

ん?
ラストにちゃんと謎解きされてましたけど・・・。
再度確認することをオススメいたします(笑)

nophoto
明石
2010年12月24日23:15

こんばんは。
風邪、早くよくなりますように。

ラストにちゃんと謎解きされてた「薔薇の名前」というのは、「生涯唯一の恋人」?
…薔薇だと思えなくないですか?(失礼かな)
それ以外の意味があるはずだけど、まだ分かりません。

異端審問官ベルナール・ギーとウィリアムの過去の確執に興味が出てきました。
DVDの特典映像にドイツ語の吹替えシーンあるんですか?見てみまっす。

…それと、直接は関係ないんですが。
声と言えば、木村さんの声に、あたたかみと「伝える力」のある、ムスクっぽい魅力があると思うんです。
人生経験を重ねて、セクシーなムスクから温かみのあるムスクに変化したような感じがありませんか?

HT
2010年12月25日0:19

こんばんは。

今日一日家に籠った甲斐あって風邪はかなりよくなりました。

>…薔薇だと思えなくないですか?(失礼かな)

ははは・・・。
どんな人が薔薇であって薔薇でないかは、人それぞれ。
薔薇にもいろいろありますしねw

>セクシーなムスクから温かみのあるムスクに変化したような感じがありませんか?

キムラの声=ムスク、ですか。
そうですね。
ムスクはバリエーションの多い香りイメージですし・・・ただ、私は今のキムラが
とってもセクシーに感じるので。
薔薇と同じで何をもって<セクシー>とするかも人それぞれでしょうね。
もしキムラの声がムスクだとすると、昔の彼はJovanのムスク。
いかにもアメリカっぽいカジュアルでアグレッシヴなムスクの香り。
少しトーンの高い音なんですよ。
今は、そうだな・・・もっと甘くてうっとりするような感じかな。
ちょっとだけバニラやアンバーを重ねたような、複雑な味わい。
トーンが低くてまろやかな音ですね。