derek jarman’s garden(編集・追記しました)
derek jarman’s garden(編集・追記しました)
derek jarman’s garden(編集・追記しました)
美しいものとは何か。

例えば自然の美しさ。
何の作為もなくただそこにあるだけで美しい。

しかしヒトがある作為を持って作り出した風景に
心を奪われることもあります。

Derek Jarmanは1994年にAIDSで亡くなった映像作家です。
作品は同性愛者である彼のパーソナリティと深く関わっており、
切り離して語ることはできません。

一方で晩年、イングランドのダンジェネスという海岸沿いの荒れ地に
少しずつ手を加え、庭(=Garden)を作り上げたことでも有名です。
イギリス人の園芸熱は有名ですが、彼の庭は一風変わった作りです。
基本、植物は地のもの(海岸沿いの荒地で生育できる植物は限られていました)
庭作りのセオリーとは異なる独自の美意識で選び抜かれたオブジェの数々。
遠いどこからか波に乗って・あるいは何らかの理由で打ち捨てられた木、
漁師の道具、農具。
小屋はProspect Cottage(展望の小屋)と名づけられ、黒く塗られ、それらと野性の草花を
映像作家らしいセンスで配し、根気強く手を加え、見事に個性的な庭が完成しました。
この本には庭のディテール写真が数多く収められ、アザミやケシなどの野性の草花たちの
素朴な美しさ・・・ひっそりとはびこる苔の緑・・・赤さびた金属のオブジェ、
波と風に削られ丸くなった骨のような小石、
それら全ての織り成す力強さに圧倒されます。
また、ページごとに彼の短い文章が添えられており、
その繊細で鋭い観察眼や独特のユーモアは読む者の感受性を刺激します。

AIDSに刻一刻と肉体を蝕まれながら、彼を強く支えていたもののひとつが
この庭作りへの情熱であったこと。
だからこそ、彼のGardenは見るものの目を釘付けにし、そのむき出しの美しさは
心に漣を立てずにはいられません。

写真3枚目の遠景に映る不気味な施設。
ダンジェネスの原子力発電所。
彼は敢てこの場所を選んだそうです。

自然のあるがままの素朴な生命力と反骨精神旺盛な映像作家の作為。

正反対に見える二つが奇跡のように出会った、荒涼たる風景の中の天国の美。

いつかは訪れてみたい場所です・・・。

コメント

nophoto
明石
2011年1月9日10:11

地衣類の写真も魅力的ですね~
今も冷たい海風にさらされていそうなオブジェも、
無機質なのに、たまらなく物語性を感じさせます。
彼が大事に思っていたという「思い出の花」も現地で見てみたい!

MAYUKO
2011年1月9日10:25

HT様 おはようございます
デレク・ジャーマンの存在は知っていますが
これは初めて…です…。

三枚目の…野性の花々の向こうに見える文明…
このコントラストは…圧倒されますね…


HT
2011年1月9日10:50

明石さん、おはようございます。

彼の庭は今も変わらずあの場所にあるようです。
一時期は放置され、荒れ果てているとも噂されていましたが・・・。
一度は訪れてみたい場所ですね。
地衣類も珍しいものが観察できるようで(@KU:NEL)マニアにはたまらない場所なようですよ。

HT
2011年1月9日10:57

MAYUKOさま、おはようございます~。

まさに圧倒でございます・・・。
彼の映像そのままに、自然と文明(=人間)、美と醜のコントラストが
言葉でなく風景によって圧倒的な力で語りかけてくる場所だと思います。
映像作家としての面目躍如かと(笑)