とても重く激しく暗い作品で完全な鬱展開でしたが・・・面白かった。
といいますか、ひたすらダニエル・デイ・ルイスの凄まじさに
打ちのめされるための映画。

20世紀初頭。
自らを『石油屋』と呼び、小さな息子を連れ、アメリカの荒野を彷徨う男。
人を信じられない男。
騙し、罵倒し、戦い、人の命を奪いながら、油田に執着する男。
油田のカネに群がる貧しい人々、胡散臭いカルト教団の教祖。
・・・レーダーもセンサーもない時代、石油発掘は賭けであり、富か破滅か、
石油屋はまさに一攫千金のギャンブラーなのでした。

荒野の突き抜けた青い空、乾ききった茶色の大地。
コントラストの強烈な画面、ノイズを多用した不安感を掻きたてるBGM。
その全てが、デイ・ルイスの恐るべきパワーを引き立てる背景に過ぎません。

テクニカルな意味での演技の上手い・下手の判断は私にはくだせませんが、
知的な外見とグロテスクな怪物じみた内面を兼ね備えたダニエルという役は、
彼以外演じ切れなかったに違いありません。
理屈でなく・・・デイ・ルイスが石油屋ダニエルであり、ダニエルという人物がまさに
俳優の肉体(声や仕草を含めて)を借りて実体化してるんです。
なりきり、というとロバート・デ・ニーロが即座に思い浮かびますが、印象が全く違いました。
デイ・ルイスは役を自分にひきつけて・・・自分と役との境目が曖昧になってくタイプ。
この作品で彼はアカデミー主演男優賞を受賞しているのですが・・・こんな演技
(というよりも人間の生き様そのもの)を見せ付けられて、異議を唱えられる訳がない(笑)
まさに唯一無二。

デイ・ルイスは一時期俳優をやめてイタリアで靴職人の修行をしてたな。
モノヅクリの好きな人であることは間違いないでしょうけど、疲れてしまったのかも?
毎回このテンションで演技してたら、消耗して生命力が枯渇するんじゃないかと心配になってしまったのでした。

ダニエル・デイ・ルイスに打ちのめされたい方には絶対オススメ!(笑)

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