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コリン・ファースが素晴しかった・・・。

彼の繊細な表情の変化、口調に身振りに現れる内面の葛藤の表現に
ひたすら魅了されました。
なんといったらいいのか・・・「シングルマン」でもそうでしたが、彼を見てると幸せなんですよ。
・・・といっても美しさにうっとりするとか、ハッピーになる、とかいうのとは違って、
その人の醸し出す空気感を映画館という空間で味わうことの幸せといいますか。

ストーリーは至ってシンプル。
英国王ジョージ5世の次男アルバートは幼少の頃から吃音(どもり)に悩まされていた。
聴衆を前にスピーチすると、緊張のあまり一層それが酷くなってしまう。
アルバートを心配した妻が一縷の望みをかけてやってきたのは、
いかにも胡散臭いオーストラリア人の<自称・言語聴覚治療士>ローグ。
彼が行ったのは所謂「カウンセリング療法」に近いものでした。
全身の筋肉をリラックスさせ、抑圧された感情を白日の元にさらし、原因を探り当てる。
当然施療の間、ローグとアルバートの間には心理的葛藤が生まれるのです。

妻に説得され、いやいやながらローグのアパートを訪れたアルバート。
表情は固く、ソファに座った体も緊張と警戒心から強張らせた彼は、
ほとんど身振りを交えずどもりながら喋る。
国王と平民でなく対等にコミュニケーションしようと試みるローグの辛抱強い働きかけで
少しずつ心を開いていくアルバート。
固く禁じられていた<下品な言葉>を吐き、幼少の頃受けた虐待に近い体験や
威圧的な父王への屈折した想いを、時にはドラマチックな芝居の台詞のように、
ときには独り言のように語りだす。
施療が進むにつれ、彼のゼスチャーはより豊かに大胆になり、声は大きく、
あたかもマグマが噴出するように怒りと悲しみが奔流となって一気にあふれ出す。

コリン・ファースってバランス感覚の凄い人なんだろうな。
アルバートとローグ二人のシーンがとにかく多いので、
感情表現を抑えすぎると退屈だし、やりすぎると暑苦しい。
そこにアルバートが<居る>かのように存在しながら、
見る側を内面の葛藤にシンクロさせてしてしまう素晴しさ。
物語のクライマックス、ドイツとの宣戦布告演説のシーンが凄い。
単語の一つ一つを、自分自身と戦いながら搾り出すような声の調子。
マイクの向こうで、身振り・手振りで指示するローグ。
『世界の秩序を取り戻すためのナチスとの戦い』への宣戦布告は同時に、
『国王たる自分自身の内面の秩序を取り戻すための戦い』であることを、
鮮やかに印象づける。
最初の試練を乗り越えたアルバート=ジョージ6世の背中は、自信と誇りに満ち、
若き王の誕生を高らかに宣言しているようでした。


追記)

アカデミー賞の話題にのっかって。

ソーシャルとこれとどっちが・・・?といわれれば個人的にはソーシャルがすきです。
DVD発売されたら買うし。
しかし賞となるとまた違う見方が存在するんだろうなー・・・というのはなんとなくわかる。
『普遍的な人間像』を描いてるのは断然コッチ。
俳優さんのすごさで言えばもう、比較しようがないかな、というのが正直なところですかね。
コリン・ファースをこの役に選んだから成功したようなモンではないでしょうか?
彼の主演男優賞は文句なし、ですよね。

コメント

nophoto
明石
2011年3月7日21:34

こんばんは。
「英国王のスピーチ」観ました。
コリン・ファースの表情、佇まいがとても素晴らしかった!!
アップの表情にも非常にひきつけられましたが、
引きの映像で感心したのが、ローグと外を歩きながら、
「私とお前とは身分が全く違う」旨の捨てぜりふをはいて、一人、もやのかかる大通りを歩き去るシーン。
ちょっと外股で歩く、怒りと忸怩たる思いを両方抱えたような後ろ姿がよかった。
王としてのスピーチも見事でした…
あの声と説得力。
「熱いメディア」といわれるラジオの出発点に立ち会ったような気分です。
「アナザー・カントリー」では23才くらいでずいぶん老成した感じでしたが、
あの低い声はかなり作った声だったのでしょうか。

ヨーク公夫人がエレベータの二重扉を扱うシーンが好きです。
彼女の顔、どことなく大竹しのぶを思わせるものがありませんか?

HT
2011年3月7日22:04

コリン・ファースは仕草がキレイですよね。
色っぽい/////←そこか。
あの後姿はほんとに印象的でした。
いい俳優さんは後ろ姿が語る。なんちゃってw

アナザー・カントリーは上映当時見たんで記憶曖昧・・・。
また機会があったらみたいです。

大竹しのぶか~・・・私はむしろジュリエット・ビノシュが似てると思いますw