一ヶ月以上前に見たのですが、
印象が強すぎてなかなか文章にできず。

中央アメリカ:ホンジュラスの少女サイラ。
彼女のお父さんは不法滞在していたアメリカから
強制送還されて祖国へ戻ってくる。
祖国はあまりにも貧しく生活は苦しく未来が見えない。
サイラは父と叔父と、メキシコを経由してアメリカへ
不法入国する危険な旅へ出る。

メキシコのストリート・ギャングのカスペル。
抗争と犯罪に明け暮れ、殺人も日常茶飯事の生活を送りながら、
美しい恋人と出会い、ささやかな幸せを見つけた彼だが、
ギャングのボスに恋人を殺されてしまう。

こんな二人が偶然アメリカ行きの貨物列車で出会い、
カスペルはレイプされそうになったサイラを救うため
ギャングのボスを惨殺し、仲間に追われる身となる。

サイラもカスペルももう後には戻れない。
故郷を棄ててひらすら<富と希望の国>アメリカを目指す。

列車でアメリカを目指す旅、といっても切符で乗車なんかしません。
貨物列車の屋根によじ登って無賃乗車で中米を縦断するんですよ。
約2週間の行程。
雨が降ろうが風が吹こうが、落ちないようひたすらしがみついているしかない。
屋根から落ちたら当然死ぬ。
警備隊に検挙されたら強制送還。
幸運にもアメリカ国境に辿りついても、国境警備の目を盗んで侵入するのは至難の技。
五分五分の確率に賭けた人々。
もちろんアメリカでは不法滞在者なので保険も福祉も適用範囲外な上、
まともな職にはつけない。
そこまでして?と思うけれど、祖国は荒廃し、絶望と暴力と貧困と犯罪が支配し
若者には未来がない。
映画冒頭で淡々と描きだされる彼らの日常は背筋が寒くなる悲惨さ。

そんな中南米の人々の過酷な現実を克明に描きながら、
青年と少女の純愛ロードムービーでもあり。
サイラは強く可愛く行動力があって、宮崎アニメの女の子みたいなタイプ(笑)
カスペルは見た目刺青だらけでコワいけど、どことなく仕草が優しくナイーブで、
心の奥に本来の優しさを隠し持ってるのがわかる感じ。
二人ともとっても初々しい雰囲気があって、俳優さんっぽくなくて、
そこがまたこの映画にぴったりなんですよね。
執拗な追っ手のウラをかき、危機一髪で罠から逃れ、ひたすら逃避行を続ける二人。
サイラを守りながら決してあと一歩を踏み出さないカスペル。
自分の命なんて大したもんじゃない。
恋人を殺され、未来の希望も消え、人生の意味を見失った。
そんな彼は、サイラを光の国=アメリカへ送り届けることが生き続ける理由になっていく。
お互い恋に落ちてるに違いないのに、微妙な距離感をとり続ける姿が愛しい。

ラストまで一気に見てしまい・・・気が抜けて呆然としてしまいました。
確かに悲惨だし、暗い物語ですし、でも何か見終わったあと僅かな明るい光を感じました。
どんな悲惨な状況でも人を信じ共感し、困難を乗り越える力が人間にはあるのだと、
がけっぷちのほんとにギリギリのところで描ききっているから、だと思います。

公式サイト
http://www.yami-hikari.com/

製作にガエル・ガルシアの名前がありました。
結構作る側にもまわってますね~・・・。

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