むき出しの茶色い地面に降り立つのか?
それともまさに飛び立とうとしているのか?
ドイツ製の白地にオレンジのラインの鮮やかなヘリ。

青い空をバックに佇む、サビの浮き出た白い防波堤の表面。

晩秋の、エクリュの空に黒い神経線維のように張りついて見える
梢と散りそこねた枯葉。

王冠型の白いサーカス?のテントを、真っ黒な作業着に身を包んだ、とても小さく見える男が
塗装している遠景。
(表紙の写真です)

・・・どんなに文章で表現しても、その一枚のインパクトにかすりもしないと思い知る。

野口里佳の写真の被写体は、美しい人物あるいは風景ではなく。
ある決定的瞬間でもない。
技巧を凝らした『アーティスティックな』一枚というのでもない。

しかし、その日常的で同時に非日常的にも思える、目を奪うようなある瞬間が、
まさにそうあるべき姿で、色合いで、質感で、焼き付けられたんだな、と思う。
ページをめくるごとにその<一瞬>へと目線が入り込んでしまう。

言葉で表現しようのない、<見ること>の快感をたっぷり味わえるのです。

横浜トリエンナーレの『鳥と人』のシリーズを見て虜になって、ネットで探しました。
amazonでは品切れになってますが、こちらから直接購入できます。

http://www.mdn.co.jp/di/book/44191/

野口里佳特別編集、とでもいうような構成になっていてとてもいい本でした。
インタビューも読み応え充分。

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