文句なしに面白い!

http://disney-studio.jp/movies/mission8/

たぶん現在からそう遠くない未来のアメリカ、シカゴ。
スティーブン大尉は朝の通勤電車でふと気付くと見知らぬ女性と向かい合わせに座っている。
彼女は彼を「ショーン」と呼び、どうやら知り合いらしい。
が、彼は自分が何故そこに居るのかがわからない。
アフガニスタンの軍事作戦にヘリで参加していたはずが何故?
トイレの鏡を覗き込めば、そこには見ず知らずの男が。
パニックに陥るスティーブン。
・・・そして8分後、列車で悲劇が起きる。

人の死後、脳には死の直前8分間の記憶が残されている。
最新の量子物理学に基づいて、その8分間の記憶をプログラム化し、他人の脳に転送する。
すると、受取った側の脳の持ち主は、8分間だけ死人の記憶の世界に入り込み、
自由に活動し、最後の8分間の状況を変化させることも可能、という設定。
バーチャル版タイムトラベラーですな。
何度も主人公がアクセスするうち、8分間の出来事の展開がどんどん変化し、
バリエーションが増えていく。
「もしあのときAでなくBの方を選んでいたら、結果は違っていたはず。」
ある種のパラレル・ワールドものでもあるのです。

タイムリミットは8分。
観客はいきなり誰かの<最後の8分間>の世界に放り込まれ、スティーブン大尉と
まったく同じ、訳のわからない状況に置かれるからこそすんなり感情移入ができて、
一緒に謎を解きながら任務を遂行する気分になれる。

しかもこの映画、単なるSFサスペンスではありません。
テクノロジーはどこまで人間の精神への干渉を許されるのか。
記憶をプログラム化できるとして、ではその所有権は誰にあるのか。
高度医療が発達した世界での生と死の線引きはどこにあるのか。
「過去の改編」はどこまで可能なのか。
などなど、現実に起きている出来事に当てはめて考えてしまうテーマが
いくつも提示されていて、単なる絵空事で終わらないとこも凄い。

監督はダンカン・ジョーンズ。
『月に囚われた男』の監督さんの、これが第二作目。
徹底して鬱展開だった前作に比べ、メジャーになった分ラストが明るい。
(人によってはやっぱり暗いと思うかもしれませんが;)
しかし、テープを巻き戻すような出来事の繰り返しで観客を混乱させる手法や、
テーマの選び方など共通点が多く、前作が面白いと感じた人は絶対ハマります。

主演はジェイク・ギレンホール。
かなり濃い顔の彼は、「ブロークバック・マウンテン」のゲイのカウボーイ役が良かったな。
いい俳優さんだ。

上映時間90分というコンパクトさがいい。
ダラダラ余計な説明も映像も一切なく、まったく退屈しない。
これを見た後、「ミスター・ノーバディ」という映画を思い出しました。
今年の春にみたんですが、「もし、あのときAでなくBを選んでいたら?」という
パラレル・ワールドっぽい作品で、似てるんですよ。
しかしこっちはムダに長くて、途中ですっかり飽きてしまいました。
役者さんもいいし、セットも凝ってるし、ストーリーも興味深いのに、勿体無かったなー。
そこはやはり監督の編集の腕にかかってるんでしょうかね。

コメント