大友克洋GENGA(原画)展に行ってきました。
http://www.otomo-gengaten.jp/#home

『AKIRA』の漫画家、といえば知ってる方も
多いんじゃないでしょうか。
私がこの稀代の漫画家の作品に出会ったのは
中学生のときだったと思う。
そのころ遊びに行ってた二つ年上の男子の家で
確か『気分はもう戦争』を読んで、
その内容もさることながら、上手すぎる絵に衝撃を受けたのだった。
ハードボイルドでクールなお話を、超絶画力でこれでもか!と叩き付けるその腕力。
しかし、本当の衝撃はその後にやってきた。
『童夢』
小さな女の子と痴呆初期の老人。
たった二人の、肉体的には<弱者>とも言える人物の超能力対決によって
巨大な団地がまるで爆撃を受けたように崩壊していく様を、
粉々に飛散するコンクリートの欠片一つ一つ、歪んだ鉄骨の一本一本、
そして舞い上がる巨大な土煙に至るまで、
リアルな質感で詳細に再現した凄まじい画力。
一度見たら忘れられないです...。
そして漫画史に永遠に残るであろう金字塔『AKIRA』。
ちなみに私は鉄雄でなく<健康優良不良少年>金田くん派←w

前置き長くてすみません。

で、その超絶画力の大友先生ですよ?
原画がすごくないわけないじゃないですか?
もうね、圧倒されました。
素晴らしいんですよ。
デッサン力はもちろんなんですが、センスが。
今回、カラーイラストが多数展示されていた上、すぐ近くで作品を拝めましたので、
もう細部に至るまで、一枚一枚まじまじと堪能いたしました。
精確に引かれた線。濃淡のバランス。効果的な色使い。絶妙な筆遣い。
「すっげーーーーーーーーー!!!!!」
すんません、これしか言えねぇ。
天才っす。もう、神。

会場には初期の作品の実物原稿も多数展示されています。
いやー...なんなんだ、このリアリティ。
漫画の原稿は墨で描いてあるので白黒なんですが、見ているうちに、
色彩や光の具合、空気感、人物の体温や呼吸まで感じます。
圧巻は『AKIRA』のおよそ3000枚に及ぶ全ての生原稿の展示。
細かいっす!建物や廃墟、メカの細部に至まで、これでもか!と
描き込まれているにも関わらず、全体として見たとき無駄な線がまったくない。
あれだけの密度で描かれた細部がスッキリきっちりまとまって、
リアリティとして立ち上がるすごさと圧倒的な快感。
あーーーー。言葉じゃ伝わらないな。

大友克洋という方は多分、他の人とは違う感覚でモノを見、描いているに違いない。
いや、写真を参考に描けば可能では?と考えてしまいますが、
おそらくそんなやり方ではあの超絶アングルの描写は生まれないはず。
これは私の推測ですが、大友先生の脳内には、精密な3Dグラフィック機能が
完備されているはず。
脳内で描いた対象を、360度自在にクルクル動かしつつ、
無限大の宇宙から一気に針の先のサイズまでピント調整できる機能つき。
ああ。
この方の脳内映像をぜひとも覗き見したいものだわ。

今回の展覧会は、宮城県出身の大友先生が、東日本大震災を経験した上で
自分にできることは何か考えた末、
「自分は漫画家なのだから、絵を見せることで行動するしかない」
と出した結論でもあるそうです。

絵描きは絵で。
文章書きは文字で。
俳優なら、お芝居で。
ことさらに<復興>を旗印にしなくても、自分の本来の能力をまんま生かした形で。
他の人とは少し違う、特別な授かりものを天から受け取った人ならではの
行動の仕方ってあるよね。

そうそう。
ロケーションも面白いんですよ、この展覧会。
331アーツ千代田という、元中学校をそのままアートスペースに改装した建物で、
廊下の手洗い場や、教室の間取りなんかをそのまま生かしてあります。
階段の踊り場には「寄贈」と書かれた巨大な姿見が(どこの学校にもあるよね)
1Fはギャラリーとおしゃれなカフェ。
2F以上はアートのレンタルスペースになってます。
前庭は芝生に覆われ、大きな緑の樹が一本。
近所のハワイアン教室(?)の生徒さんたちが練習してたりして、のどかで
いい感じの休日の風景でした。

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