最強のふたり

2012年9月14日 映画
http://saikyo-2.gaga.ne.jp/

強盗の罪で服役を終えたばかりのドリスは、失業手当を貰う為に大富豪の障害者
フィリップの介護の仕事に応募する。
(フランスでは就職面接の不採用通知が3カ所分あると手当が貰えるらしい)
不採用のつもりが何故か採用。
お金も知性も教養もありながら、頸椎損傷で首から下が全く動かせないフィリップと元気とユーモアと健康だけは人一倍だが貧困層で育った元チンピラのドリス。
周囲の誰もが眉をひそめる正反対の2人が、数々のギャップを克服し固い絆で
結ばれていく、というストーリー。

冒頭、スーパーカーみたいな黒塗りの車で警察とカーチェイスを繰り広げる
ドリスとフィリップのシーンから始まる。
ヒゲ面のダニエル・デイ・ルイスをちょっと丸顔にしたような上品なフィリップと
スキンヘッドに黒檀のような肌、白目と歯が美しいドリスの組み合わせ。
危険運転の罪で警察に逮捕されかけるドリス。が、重い身体障害のあるフィリップが
発作で今にも死にそうなお芝居で警察官の目を誤摩化し、パトカーで救急病院へ
先導までさせて、まんまと逃げてしまう。
とても象徴的なシーン。
もしフィリップが障害者でなかったら、警察官はもっとよく状況を調べて
2人を逮捕したはず。
フィリップは自家用ジェットを所有し、芸術的造詣が深く、素晴らしい邸宅に
大勢の使用人のいる暮らしぶり。
しかしパラグライダーの事故による全身麻痺で自分では何一つできない現状が
彼をいら立たせ、気難しく扱い辛くしている。
彼の元へやって来る介護士は皆、介護のエキスパートであるがゆえに患者として
<腫れ物に触るように>彼に接する。
ドリスははなっから介護士になろうなんて思ってもないし、介護の知識も技術もなくましてやお金も教養もない。
フィリップの全身麻痺なんておかまいなしで極ふつうに接し、時には障害をジョークにして笑い飛ばす。
陽気で無邪気でノリがよくて屈託のない態度は、フィリップと周囲の人々の気持ちを徐々に解していく。
重い障害者であるフィリップは、<健常者>と区別して扱われ、ある意味社会から
隔てられた存在。
そして貧困層出身のドリスもまた底辺の存在であり、まっとうな社会生活から
落ちこぼれた存在。
フィリップとドリスのあり方は、見えているようで見えてない(または、見ないようにしている)社会の中のギャップを意識させてくれる。
同時に、そのギャップを<存在しないもの>であるかのように振る舞うことと
<過剰に意識すること>とは、同じくらい誰かの生き方を邪魔しているかもしれないと気づく。

あなたとわたしは全然別の人間である。
どう違うかは実際のところ接してみないと分からない。
違う者同士がコミュニケーションすれば、そこに共感と違和感が生じる。
その両方を楽しんでしまうのが一番大事なのかも。

…と、そんなことを考えた。

音楽がとてもいい。
バッハやヴィヴァルディのクラシックが効果的に使われていたけど、
Earth ,Wind&Fireの曲が使われた2つのシーンがどちらも最高にカッコよくて、
ハッピーになる。

冒頭のカーチェイス。
ドリスがこれを大音響で響かせながら大声で歌う。
『September』
http://www.youtube.com/watch?v=2S8ZrQG0y6g&feature=related

フィリップの誕生パーティでこれに合わせて粋なスーツで踊るドリスに惚れ惚れ。
まるで自分もダンスしているかのようなフィリップの表情も最高にいい。

『 Boogie Wonderland』
http://www.youtube.com/watch?v=_jLGa4X5H2c

ドリスのジョークってかなり辛辣なんですよ。
彼が旨そうに食べるマーブルチョコを「わたしにもくれ。」と言うフィリップに
「これは<健常者用>チョコだからあんたにはあげないよw」とドリス。
苦笑いのフィリップ。
にやっとわらってドリスがようやくチョコをフィリップの口に入れる、とか。
フィリップのヒゲを剃るシーンでは、わざと鼻の下にチョビヒゲを残し前髪を水で
濡らしてヒトラー風に作り上げ、「ハイル!」とポーズを取らせる、とか。
(フランスは第二次大戦時ナチス・ドイツに苦しめられた)
…これ、日本映画に置き換えたらどんな感じになるだろうな〜。
フランスでは大ヒットで国民の3人に1人(のべ人数)が見た映画らしいですが、
日本で同様の作品を上映したらどんな反応が返ってくるのかな。

そうそう。
ハリウッドが早速リメイクするそうですよ(苦笑)

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