数年ぶりに原宿。ラフォーレ。
konynonちゃんとデビッド・リンチ展に行ってきました。

http://www.cbc-net.com/event/2012/09/david_lynch/

デビッド・リンチ。
TVシリーズ『ツイン・ピークス』の監督、っていえばピンと来る人も多いのかな?
『イレイザー・ヘッド』『ブルー・ベルベット』『デューン砂の惑星』とかも撮ってますが、エンターテインメント性と変態的パラノイアチックな拘りとが、
独特のバランスで共存する芸風wが特徴。
最近はかなりアート性の高い(=変態性の高い?)芸風に傾いてる模様。
今回の展覧会ではドローイング、写真、ショートフィルムが体験できます。

館内、かなり暗いです。

まずは写真。
廃墟や裏通りなど、人気の無い構造物をモノクロで撮影してあるのですが、
全体の風景というよりディテールに思いっきり近寄って撮っているので、ちょっと見
何が映ってるのか分かりません。
よーく見ると剥げた壁とか、正体不明の液体のシミとか、ボロボロのブロックから
突きだした錆びた鉤針とかで、これがめっちゃ怖いんですよ。
なんというか…目には見えないけれど、人間の念が漂っているような…。
ここ、絶対誰か死んでるやろ!!!! 人の影が彷徨ってるやろ!!!!
…みたいな想像をしてしまうような写真(笑)

次にドローイング。
陽に焼けて茶色くかさかさに変色したような紙に黒のパステルで殴り書きしたような
不気味なキャラクターの顔や何かの断片のデッサンみたいな絵。
それからほとんどモノクロのグワッシュらしきもので描かれた、変形した人の顔。
ううむ…誰かの絵に似ている…そうだ、フランシス・ベーコンの画風にそっくり。
(注:ICWRのハスフォードのアトリエにあった気持ち悪い一連のオブジェは、
フランシス・ベーコンの作品のパクりです)
…と思ったら、リスペクトしている画家にフランシス・ベーコンの名前が(笑)
そうか、これはオマージュなのか(違)
圧巻だったのが、縦横が2m×4m位ありそうな一連のシリーズ。
思春期の衝動的行動がテーマだと思うのですが、分厚く重ねた絵の具の質感と、
木の棒やら豆電球やらジーンズやらシャツをくっつけた半立体になってます。
これも人物の顔や肉体が例外無くねじ曲げられている。
…人体を変形させたり故意に誇張したり、なんというか、人間性への悪意みたいな。
怒りや衝動や死や、重くて暗いものを描いているんですが、でも嫌いじゃないです。
私はフランシス・ベーコンは嫌いなんですけど、リンチは嫌いじゃない。
どこかにちょっとユーモアがあるんですよ。
とっても捻じくれた黒い笑いなんですけど…。
そこは彼の映画と通じるものがあるんですよね。

一番興味深かったのは、やはり映像。

『RABBITS』

http://www.youtube.com/watch?v=CdjWWSKfKsg
(つべには字幕無ししかupされてなくて…)

ウサギの被り物をした、家族と思しき3人の、密室劇。
昔TVで見てたアメリカのホーム・ドラマみたいな設定なんですが、登場人物の会話が
全く噛み合ってない。
3人は何かの<予感>に緊張し、怯えているのですが、一体何に怯えているのか
曖昧で、密室の閉塞感と気味の悪い音楽、そしてウサギの被り物のせいで全く表情が
わからないのも相まって、見れば見るほど、こっち側に不安が伝染してくるのです。
じわじわと少しずつ広がる黒いシミのように。
また画面の構成がほとんど完璧なんですよねー…。
それぞれの俳優さんの動きの速度、喋り方、声のトーン、立ち位置、タイミング。
どの瞬間も隅から隅まで恐ろしく計算されつくしている。
あまりにも完璧で、返って気持ち悪い。
興味深いですが、俳優さん、肉体的にも精神的にもめちゃくちゃ消耗しただろうな。

ちなみにお母さんウサギ役がナオミ・ワッツ。
…よく引き受けたな、こんな役(笑)

時間が立つほどにじわじわ後味が広がって来る、インパクトある展覧会です。
12月2日まで。

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