http://www.lesmiserables-movie.jp

TVで予告も見たし、インタビューでのヒュー・ジャックマンのキュートさ(笑)に
素敵な男性だなぁ…と思いつつ、実は見に行くつもりじゃなかったのですが…。

気がついたら涙が溢れてる、という体験をしてしまった。
ジャン・バルジャンが、ファンテーヌが、画面いっぱいの超クローズアップで歌う。
奥底からわき上がる感情の昂りのまま、全てを<声>に注ぎ込み爆発させる。
天上世界から人々のちっぽけな営みを見下ろしているであろう、神という存在に
向かって、愛と怒りと悲しみと喜びと希望と絶望を訴えかける。
歌より祈りに近いもの。
ドラマティックで壮大な音楽と相まって、考えるより先に感情の渦に引き込まれ、
翻弄される感覚。
台詞(ここでは歌詞ですが)や役者の演技に心が動いて感動する、というのとは
また別次元で…
むしろ思考を飛び越え、見る者を演じる者の感覚の磁場に一瞬で引き込んでしまう
力技、とでもいいますか。

もちろんそういう作品ですから<声>のよい役者さんばかりです。
ジャン・バルジャンとファンテーヌのソロシーンの歌声は素晴らしかったですし、
ジャベールの深みのある声質はとってもセクシーですし。
個人的に一番「凄い!」と思ったのは、エポニーヌ役のサマンサ・バークスかな。
囁も、朗々と力強く歌い上げる声も自由自在で、しかも色気がある。
片思いの相手を陰から見守りつつ、雨に打たれながら切々と歌い上げる胸の内。
そして、革命の歌やラスト大団円の壮大な合唱のシーンは、声のパワーで体が
ぐぐっと押されるような錯覚すらありました。

映像も個性的でした。

初っ端の、嵐の中でガレー船を人力で引き上げるシーン。
CGでしかあり得ないカメラワークなんですが、空の高い位置から一気に下降し、
傾いた舟のマストから舳先を掠めて地上すれすれに舞い降りて、悲惨な囚人たち
ひとりひとりの絶望に満ちた表情を見せる。
そこから一気にジャン・バルジャンの仮釈放、フランスの険しい山岳地帯の彷徨、
キャンドルで効果的に彩られた、美しく厳かな教会の内部のシーンへ。
手前から奥へ、奥から手前へ、ヒュー・ジャックマンが歌いながら移動するのを、
正面から目の高さのカメラでずーっと撮っている。
すると丁度、3Dで登場人物がこっちへ飛び出してくるような感覚なんです。
更に役者さんの見せ場、ソロで歌い上げるシーンは、ほぼバストアップでカメラを固定してるので、一人の役者さんにスポットライトが当たっている感じ。
舞台でのお芝居をかぶりつきで見ている感覚を狙ったんじゃないでしょうか。

ミュージカル映画なのでしょうけれど、今まで見てきたものとはまた違う。
音といい映像といい、素材は極オーソドックスですが、見せ方はかなり計算して
面白いものを作っているなぁという印象です。

音も映像も、一般家庭のTVだとあの迫力を十分に発揮できないんじゃないかな。
大スクリーンで、出来るだけ音響のよい映画館で見るべき作品かと思います。

コメント

nophoto
ブルーノ
2013年2月3日8:34

おはようございます。

私がこの映画で初めて経験したことを、すごく納得できる表現で書いてくださって。

>ドラマティックで壮大な音楽と相まって、考えるより先に感情の渦に引き込ま れ、翻弄される感覚。気がついたら涙が溢れてる。
 むしろ思考を飛び越え、見る者を演じる者の感覚の磁場に一瞬で引き込んでし まう力技、とでもいいますか。

まさに、HT様のおっしゃるとおり。気がついたら涙が出てる場面がいくつもあって。こういうことだったんですね。

>革命の歌やラスト大団円の壮大な合唱のシーンは、声のパワーで体が
 ぐぐっと押されるような錯覚すらありました。

このシーンで、トリコロール国旗の赤が鮮明で印象的。大合唱のシーンをさらに迫力あるものにしたように感じました。

素敵な文章、ありがとうございました。

MAYUKO
2013年2月3日20:30

HT様 こんばんは

ファーストカットから圧倒的な映像でしたね。

いきなりのCGシーンって、
ともすると白けてしまう場合がありますが、
囚人たちの圧巻な歌声も手伝って
全く違和感を感じさせず、
ジャン・バルジャンとジャベールの
運命的な出会いと戦いの始まり
そこからジャン・バルのジャンの再生までの
畳み掛けるような流れが余計に
思考する事を停止させてしまうというか。

いや〜まいりましたと思いました。

舞台だと暗転する数分で息つく間もジャン・バルジャンありますが、
映画だからその間もなく…。

二回みましたが、全く長く感じませんでした。

実は私、ラッセル・クロウがあまり好きじゃないんですが。
初めて良いと思ったり…
いや〜また、見たくなりました。








HT
2013年2月3日22:18

ブルーノ様、こんばんは。

>気がついたら涙が出てる場面がいくつもあって。

ブルーノ様も同じ体験をなさったんですね。
あれは…一体何なんだろうと、見終わってから暫く考えこんでしまいました。
もちろん字幕はあるんですが、言葉の意味に心動かされるのとは全然違う。
ガーン!とかガツーン!とか、敢えて言えば<愕然>に一番近かった気がします。

>トリコロール国旗の赤が鮮明で印象的。
大合唱のシーンをさらに迫力あるものにしたように感じました。

ああ、そうですね!
赤は情熱、そして血の色。燃え上がる色彩と大合唱…見事な演出だなぁ。
学生運動のリーダーも赤い服でしたね。
マリウスはブルー。コゼットは白。
色も巧みに計算されていたんですねぇ。

HT
2013年2月3日22:19

MAYUKO様、こんばんは!

>ジャン・バルジャンとジャベールの運命的な出会いと戦いの始まり
そこからジャン・バルのジャンの再生までの畳み掛けるような流れが余計に
思考する事を停止させてしまうというか。

初っ端から有無を言わさずぐぐっと引き込まれ、おっしゃる通りの思考停止状態でした。
細かいところまで作り込まれた映像はもの凄い情報量で、しかもあの音、歌声。
私も「参りました!」でした。

>舞台だと暗転する数分で息つく間もありますが、
映画だからその間もなく…。

そうそう、高速で走り抜けるジェットコースターのようでした。
本当、憎らしいほど緻密に計算された構成なのですね。

ラッセル・クロウ。
あんなにセクシーな声だったんだ!と気づきました。
ヒュー・ジャックマンが陽なぶん、彼の目の暗さが引き立って魅力的でしたね。

私もちょっと間を置いてもう一度見たい。
いろいろ発見がありそうです。