書店でぱらぱらめくって、これは手元に置いて
じっくり見なきゃ駄目だと思った。
最初から順を追って目を通そうと。
もちろんキムラのインタビュー目当てで買ったけど、
そこにいきなり飛びこんではいけない気がした。

「アクセサリー以上のもの、お守りみたいなもの」
ゴローズのアクセサリーがどんな風に作られ、選ばれ、
大切に扱われているか、
最初のページから読んでみて初めて、言葉の意味が実感できた気がする。
皮革と銀。
人の手で触れ、頻繁に身につけることで味わいを増していく素材。
例えばベルトのバックルの裏のスレ。ブレスレットやリングの細かい傷や曇り。
酸化の黒ずみ。柔らかくしなやかに、こっくりした色合いに熟成された皮。
所有者に<なじんで>いく過程で、<その人らしさ>を写し取ったモノの写真からは時に持ち主の体温すら感じる。

「選ぶとき、自分も選ばれている」
「それを身につけるのにふさわしいかどうか」
高校生で手に入れたブレスレットから始まり、少しずつ数を増やして行くそれらは、キムラの成長・成熟の歴史を一緒に歩んできた。
触れて・見ることのできる成長の証であり、記録であり、縛めでもあるのだろう。
(観念より実体、言葉より行為を信じる彼にはまさにうってつけの存在だ)
彼の<お守り>は願掛けといったような他力本願な存在ではない。
「(闘いの前の)ネイティブのフェイスペインティングのようなもの」
彼の戦場は西部の荒野でなく、TVや映画やコンサートの現場ではあるけれど。
その<お守り>のパワーはどこから来るのか。
作った人(ゴローさん)、選んでくれた人、手渡してくれた人と彼との、精神的な
繋がりの結果として自分の手元にある。とキムラは言う。
手に入れる過程を含めて、関わった全ての人の気持ちが刻み込まれている<お守り>を身につけるのは、その人たちと一緒に<居る>のと同じなのかもしれない。
それらをある種の畏敬をこめて<お守り>と呼ぶ彼の、繊細で多分にロマンティックなセンスが私は大好きだ。
人が好きでいつも誰かと一緒に居たい、繋がっていたいという気持ちが透けて見えてそこは開放区でずーっとキムラが語ってきたことと重なる。

だからこれは、40歳の木村拓哉の開放区だと思った。

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