点が繋がって線へ、そして一気に形が見えてくるのかな?と思わせる展開でした。
小机部長、やっぱり黒幕でしたね。予想通り。
というか何もなきゃ西田敏行をキャスティングしないでしょ、っていう(笑)

杏子さん、いい女だったな。
ガラス越しに久の目線を捉えてちょっと合図して、さり気なく髪をかき上げる。
あの仕草がね、いかにもなんですけど、うん、良かったっす。
彼女の部屋のラベンダーのアロマに気分が安らいでいたらしいブラック久。
もちろんラベンダーはリラックス効果のあるハーブですが、それだけじゃない。
杏子の人となりを考えてみたんだけど、久と別れるまえの言葉…
「メモなんて取らなくていいんだよ」「嘘が多い程不倫は燃えるから」
優しい女だろうなぁ…だから社長にバレちゃったんだろうけど。
久の手を両手で握ったり、ひっそりとドアに額を寄せてたり…
想いは尽きないだろうに、敢えてサバサバ見せてる女。
男は好きだけど頼らない女、一人で歩いていける(ふりをしている)女。
…だから久は彼女に惹かれ、あそこでならリラックスできたのか。
泥酔した久が無意識に向かった先が杏子の部屋ってのが暗示的。
ブラック久も同じことしてたんだろうな。
弱いとこ、みっともない姿を恵と良雄には見せられない。
家族ではあるけど家庭ではなく、安らげる場所ではなかったのか。
家庭と呼ぶならむしろ、香とすばるの居る家。
男として甘えるのは杏子。
じゃあ恵は何の為に?
やっぱり財産目当てだったのか。
なぜ好きでもない女と結婚?
そこまで金が必要だった?
…もしや小机部長が久を監視してる理由と関係があるんだろうか。

そして取り乱した香。涙を流すすばる。
シカゴに発つ直前、妹が久に「お姉ちゃんをお願い。」って。
香のパニックを予想してたみたいに。
関係ないけど香を後ろから抱きしめて額に腕を回した姿はまんまShitaoでしたな!
あすなろ抱きならぬ、Shitao抱き。どうか香を癒してShitao!!(違)

アイムホームの凄いところは久を中心に散りばめられた人たち皆の心情が、細やかに
実に丁寧に描きだされているところ。
それもセリフじゃなく、全身の表情を捉え、表現する。
例えば恵の不倫を疑う久のシーン。
良雄とソファで模型を組み立ててるんだけど、恵の視線を感じたとたん座り直して
背を向ける。
それからパジャマ姿の久のシーン。
久の側から、風呂上がりの恵を捉えたカメラは、恵の目線に切り変わる。
そして久の肩越しに見えるTVには大映しのヘビ…疑惑を象徴するような。
部屋の中に仕切りがなく、家具も背の低いものばかりなのはこの演出のためで、
恵と久の関係性が言葉なしで、目線や角度だけで十分伝わるよう計算されている。
香とすばるの家もそうだ。
久に背を向けたすばるの、堪え切れない涙が溢れる胸の痛むシーン。
TVを見てる私にはすばるの表情は手に取るようにわかるけど、久からは見えない。
それがより一層すばるの健気さを強調していて、次のカット、二人がキッチンで並んでコロッケを揚げる姿が幸せ感一杯で…だからすばるが久に「毎日ご飯、作ってよ」って言葉がものすごいリアルさで突き刺さってくるんだよね。

もう一人のこども…良雄。
がらんと空虚な部屋。
落下して砕け散る家の模型を無表情で見つめる良雄。
どこか、姿の見えない場所から彼を呼ぶ祖母の声。
そこは家の中だけどすでに家庭の匂いを失いかけていて。
お父さんは昔のお父さんに戻ってしまう、もしかしたらそれよりもっと酷いことが
起きるかも、っていう予感。
並の演出ならたぶん、良雄に涙を流しながら模型を壊すお芝居をさせたと思う。
でも、良雄はまだほんの子供なんだよね…悲しいけどその深さや大きさを
上手く表すことすらできない。
それが一層痛々しい…。

もう一つ、あの橋の上のシーン。
去って行く香の妹の後ろ姿、見送る久。
その後、カメラは久の表情をアップにはしない。
遠くの方から橋の上の久を見つめる…ふっと傘を振る久。
何かを諦めるように、または自分自身に苦笑するように。
久の顔が見えないぶん、その気持ちに想いを馳せる。
そして、このお芝居をキムラにさせた監督の細やかさと鋭さに感服。
ファンはよーく知っている、コンサートで彼を見つめる、あの感じ。
知ってるんだよね…どんなに離れていてもそれと分かるキムラのあの感じを。

監督はキムラのお芝居を詳細に分析してプランを立てたってのがよく分かる。
彼が全身を最高に効果的に使って表現できること。
彼の仕草には独特の匂いがあること。
彼は声を自由自在に使い分けること。
彼は相手によってお芝居を微妙に変えてくること。
彼には、光の部分と陰の部分があること。
別人格に見せつつ、地続きなんだと暗示するために、ポケットに手を突っ込む癖とか料理の腕だとか、仕事の仕方だとか、さり気なくヒントを散りばめた。
アイムホームの1話からなんとなくつきまとってきたもやっとした感じはつまり
そういうことだったんだろうな。

散りばめられた点と点が線で繋がり始めた。
全ての点が繋がったとき、どんな形が現れるのだろう。
なんとなく今、良雄が組み立てようとしていた家の形を思い浮かべている。

コメント

たぬきん
2015年6月6日0:34

杏子さん、いい女だったよね(´∀`*)きっと、まだ久の事好きなんだろうな…。
かけてあげる言葉一つ一つが優しいのよね。きっと、その優しさに癒されてたんだろうなぁと推察出来る。

まぁ、もうちょっとあんな事やこんな事のシーンを詳細に描いて欲しかったですけども・゚・(ノД`)・゚・

このドラマ、カメラワークがいいよね!遠景が多いんだけど、それでも感情が伝わって来る。凄く丁寧に作ってる(*´∀`)

そっしって!!!Shitao抱き(アングルといい、抱え方といい、香のポーズといいまるっきりオマージュでしょ!)も見られて怒濤の8話でしたな!(;;゚;ё;゚;;) ハアハア

良雄とすばるが幸せになりますように…!

HT
2015年6月6日0:57

たぬきんたま☆

杏子さんが根性悪の愛人じゃなくて正直ちょっと物足りない気もしたんだけど、
久が出て行ってからそっとドアに額を寄せるのを見て本当に好きになったわ。
彼女は、タイプは違うけど久のお母さんと似てる。
男が居なくても生きて行けるタイプ。
久がお母さんを毛嫌いしていたのはマザコンの裏返しかなー、なんて。
オスとして能力高くて仕事の出来る久だけど、女には甘えたいタイプと見たw
だからねっ!!もっとオスとしてのシーンをだな!(ry.

アイムホームのカメラワークの良さは特筆ものですな!
フジみたいな派手さはないんだけど、緻密な計算で成り立っておる。
役者さんの力量が試される撮り方でもあるが(笑)
上手い人しか居ないから無問題w

>>そっしって!!!Shitao抱き(アングルといい、抱え方といい、香のポーズといいまるっきりオマージュでしょ!)も見られて怒濤の8話でしたな!(;;゚;ё;゚;;) ハアハア

コメ欄でハァハァすんなw
いやもうおっしゃる通りオマージュだよね!くっそぅ、分かってやってるダロ。
そして杏子さんとワイン飲んでる久が涼っぽいなと私は思ったのだった。

良雄とすばるには幸せになって欲しいよ……。
香に何かあったらすばるはどうするんだろう…。
良雄に年の離れたお姉ちゃんができる、ってのはどうだろう…。
なぁんてね。
そんなことになったらすばるはきっとシカゴに行っちゃうんだろうなぁ。
良雄が床に投げ捨てちゃったおうちの模型。
最後は何とか形になってほしいよ…。


nophoto
裕子
2015年6月6日23:00

HI様
8話の感想有難うございました!
HI様の読ませていただくと、さらに深くドラマの内容を
理解できます。
監督さんの木村氏分析が見事だから彼も安心して
身を任せて?いるのでしょうね。

実は今日、観劇出来なかった友人の替わりに歌舞伎6月
公演に行って来ました。席も一等席でよ~く見えました。
出演者が、仁左衛門(昔の片岡孝夫ちゃん)、幸四郎(奥さんも
来てました。染ちゃんはママ似、たか子はどっちなんでしょう(笑))
吉右衛門(鬼の平蔵とは全然違ってます)、橋之助、錦之助、
菊五郎と左団次(このひと、わりに好きなのです)以上敬称略(笑)。
豪華メンバーでした。

痛感したこと。歌舞伎は偉大な伝承文化です。
ある形を先代から受け継ぎ、またそれを次世代に多少の変化は
ありつつも渡していく。出雲のお国からずっとですものね。
やはり他の先進国にはない文化のひとつだとそして
大事にしていかなくてはと久しぶりに観劇して改めて感じました。
日本人のアイデンティティのある形だと思いました。
外国人もかなり目立っていたので、席が近かったら感想を聞いて
みたかったのですが。

それから役者さん、皆さんもうかなりのお年ですが、声がよく出てました。
あれが板の上で演じるメリットかも知れませんね。

関係のないこと書いてしまいました。申し訳ありません。

HT
2015年6月7日0:15

裕子様こんばんは。

歌舞伎、いいですね!
私は残念ながら見たことはありません。
MAYUKO様のブログを拝見して一度は生で見てみたい!と思っているのですが。
何本かyoutubeで見たのですが、伝統に裏打ちされた技術を基礎にしながら、現代の
エッセンスを大胆に取り入れた面白さは、きっと海外の方からみても面白いのでは
ないでしょうか。
人の喜怒哀楽は文化の違いを超えた普遍性があると思います。

舞台の木村拓哉、見てみたいですねー…。

nophoto
裕子
2015年6月7日10:52

そうそう昨日印象に残った場面があります。
劇中で、すでに影腹を切っている老いた幸四郎さんが
首桶を持って知人を訪れる場面の動きの上手なこと。
ふらつきながらも武士の矜持を保ちつつ、知人の宅まで
ようやくたどり着き、庭からその宅の廊下に上がろうと
するのですが、足はもうあまり上がらない。2、3回
弾みをつけてようやく片方の足だけは草履をぬいで
上がれたのですが、片方は草履をはいたまま廊下に上がり
込み、片手でその草履を投げ捨てる。

観客はそれの様子を大袈裟に言えば、固唾を飲んで見守る
って感じでした。

幸四郎さんは、良い役者は観察眼がある、という意味のことを
言っているようですが、悲壮な老武士の動きが素晴らしかった
でした。

8話で木村氏が小机部長と飲みつぶれ、目まですわって、タクシー
から降りるときも安全ベルトを外さずさずに降りようとする。
その後の歩き方も前回の酔ったときの動きとも違っていて本当に
上手でした。
幸四郎さんの言葉、木村さんにまさに当てはまりますね。