http://vampire.gaga.ne.jp/info/?page_id=8

新宿シネマカリテで見ました。
全編モノクロ。
トレイラー(上のURLから見れます)を見て
「これは大当りか大はずれかどっちかだな。」と思ったんですけど…
大当たりでした
舞台はイラン。架空の街『バッド・シティ』
麻薬の売人や娼婦が寒々しい夜、密かに蠢く街。
日本の夜とは全く違って、ネオンサインなんてものは無く、物悲しく街灯がポツリ。
闇は漆黒の暗さ…その奥から闇色のヴェールに身を包んだ少女が現れる。
白い顔。巨大な目。真っ赤な唇。(*モノクロなので想像ですが)
ミステリアスで実に…実に美しい。
罪深い男、世界からはみ出した行き場のない男を餌食にし、葬り去る。
(虐げられた女たちの怨みを晴らすかのように)
麻薬中毒者の父を持つ青年。
ジェームズ・ディーンを連想させる、ピッタリした白シャツとジーンズ。
寂しげな瞳。
闇の中から生まれた少女と青年が夜の街、白い街灯の下で出会う。
ヴァンパイア映画だから、グロテスクだったり残酷なシーンはもちろんある。
ハラハラするシーンもたくさんあるけれど、少女と青年の出会いのシーンは正当派の
ボーイ・ミーツ・ガールって感じで、なんとなく可愛らしかったりする。
「私は罪深いの。」
「私のことをあなたは何も知らない。」
まっすぐな青年の気持ちを振り払おうとする少女。
闇に溶け込んで行く少女を見つめる捨てられた子犬のような青年の瞳。
ちょっと泣きそうになる。
ホラーだけどロマンチックでちょっとメルヘンチック。
モノクロの映像だけど、カメラワークといい画面構成といい素晴らしい。
意味深な謎めいたカットがところどころ挿入され、シュール。
乾いた石造りの建物。緑も少なく殺風景だけど、かろうじて人の気配のある旧市街。
すぐ傍には規則正しく動く不気味な恐竜の群れのような石油採掘所のクレーン。
荒れ地の闇に浮かび上がる発電所の冷たい光と立ち上る蒸気。
荒涼とした大地に聳え立つ金属の群れが、ここはアジアでもヨーロッパでもなく中東なのだと思い出させる。
音楽が素晴らしい。
物悲しいイランのポップスやダンスミュージック、テクノ。
少女が自室で緩やかにダンスするシーンが強烈な印象を残す。
https://www.youtube.com/watch?v=L29cUnjnGtE
(彼女は1980年代で時を止めたのか?壁には若きマドンナやMJのポスター)
冒頭からラストまで無駄なシーンが一つもなく美しい。
そうそう、青年が飼ってる猫がめちゃくちゃ可愛いんです。
ふっくらして透き通った目をして。

誰にでもお勧めはできないけれど、ヴァンパイア映画が好きなら是非。

コメント