父親の背中を見て育つ息子。

一光を凄腕の職人外科医に育てたのはまさにこの背中だなと、包丁を研ぐ後ろ姿を
見ながらひしひしと感慨が押し寄せてきました。
「いつまで半人前扱いなんだよ?俺にしかできない手術があるんだよ。」
揺れ動く内面を吐露する一光への父・一心の言葉。
「俺が俺がだからお前は半人前なんだよ。」
ただひたすら準備をする。目の前のお客にそれを出す。一途一心だろ。
寿司職人と外科医。
一見何の関係性もない職業を選んだ二人だけど、やはり親子なんですよね。
寿司を握るのも、素材の命を戴いて誰かの体を元気にする。
それを象徴するかのように、父の店の水槽には生きて泳ぐ魚たちが居る。
沖田の迷いを細かく知るはずもないのにポンと大事な言葉を差し出す。
その言葉ではっと気づいたということは、柴田が指摘したように、
彼の中で既に答えは出ていた。
深冬のオペは自分がやる。
プライドや意地じゃなく、目の前の患者を救うために。
本来の自分を取り戻した彼が救ったのが、他の病院で見放された重い病の母親。
小学生の息子の必死な姿に昔の自分を投影させた沖田は、手術を成功させたことで
「あの時なりたかった自分」に近づけたような気がしたはず。
そして少年もまた医者を目指す。
夢を叶えたらどこかの病院で誰かの命を繋ぐのに必死な外科医になるだろう。
父の背中から沖田の心に繋いだ母の命の連鎖が未来の外科医へと繋がっていく。
あの時の沖田の幸せそうな顔。
あの顔が一瞬、木村拓哉自身とオーバーラップしました。
「ドラマを見て医者を志す若い人が増えたら。」って語ってましたよね。
何十年後かに自分を診察したお医者さんが「あのドラマで医者を目指しました。」
って語ってくれたら最高だと。
だからあれは物語の中の夢と希望のシーンでもあり、スタッフが木村拓哉に贈った
温かいプレゼントでもあった気がして。

沖田と木村本人がオーバーラップするところ、結構あるような気がします。
壮大と沖田、深冬と沖田、院長と沖田の関係性も含めて。

壮大って沖田にめちゃくちゃコンプレックスある癖に常に上から目線で、過去の話で
ネチネチ嫌味言う割にすぐ取り乱すし(笑)嫌な奴なんだけど、憎めない。
浅野さんのオーバーアクション気味のお芝居がどことなくユーモラスなのもあるし
気の毒に、院長と深冬に振り回されてあんな風になっちゃったのかな、とか。
そう、私にとって深冬って近年稀に見るような(笑)最悪なヒロインなんです。
木村が「独特の間」って指摘したのはこのことかと納得する、お芝居における
コンマ数秒のタイムラグも苦手なんで。  って、まぁそれは置いといて。
病床で日記?みたいなもんを書いてるけど何あれ?と思ってたら、万が一オペが
失敗した時に備えて幼い娘に残す覚え書きだったんですね。
で、思い入れたっぷりに書いた「パパと仲良くしてね。」
だからこそのラスト、「オペは沖田先生にお願いします。」だったのか。
嫉妬とコンプレックスで凝り固まってる壮大は取り乱してましたが、
要は大事な家族の絆を壊さないための配慮ってやつか(苦笑)
院長に遮られましたが、理由を話すつもりだったようで。
沖田の前で言うの?
万が一失敗してもあなたは背負うものが小さいから。
あなたにとって私は<特別な人>じゃないから。
うーむ。
ならば。
7話の糸結びのシーンとか、沖田にすがって泣く姿とか何だったの???
壮大と沖田二人でのオペをお願いするならまだしも。
あれじゃ昔の恋人を利用する図太い女にしか見えないし。
アライフの唯一の問題点は深冬の描き方なんだよなぁ。
まぁでもそれが深冬なんですよねぇ。
彼女を「聖母のような女性」とTV雑誌でどなたかが仰ってました。
あのせいでバイアスかかったのも大きいかもしれません。
人間だから裏表はあるしいつも気分が安定してる訳ないですけどね。
その意味では沖田も壮大も我が強くて面白い。
沖田先生、今回ほんっと嫌なやつだった(笑)
井川先生にビシッと言われて当然ですよあれは。完全なる八つ当たり。
三条さんを追い詰めるところ、反論を許さない口調や丁寧だけど苛ついた仕草が
あまりにもリアルすぎて、木村本人もあんなとこありそう・・・と思ってしまった。
うまい。うますぎる。
沖田先生、順調にビジュアルのレートが上昇中で嬉しい限りです。
最終回、ロイドやアイムホームのように神懸かり的なシーンがあるだろうか。
というか、15分延長で収まるのかしら。
井川先生が海外へ修行に出そうな伏線もあることですし、
沖田・井川・柴田を軸にアライフSPか第2シーズン「シアトル編」作っちゃえ。

コメント

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デイジー
2017年3月14日16:21

HT様、こんにちは。
「一途一心」良い言葉ですね。具体的に相談したわけではないのに、沖田先生の迷いを追い払ってくれる、これも「Back to the basics」ですね。
父親役の役者さん達がもちろん素晴らしいのですが、拓哉くんは親子関係を表現するのが、上手いですよね。。。
本当にこのアライフ、何度リピしても面白くて、それだけに「ヒロイン=愛しき人」が残念です。そう思ってはいけないと思いながら、回を追うごとに思いが強くなっています。もし、他の方でも、同じような感情になるのかなぁ・・・とまでちょっと考えてしまいました。すいません。。。
でも本当に表現したかった「愛しき人」は、深冬なんでしょうか?←じゃー誰?なんですがw
井川先生が、留学の事を気にしているのを見て、私の私におけるアライフのハッピーエンドは「シアトルに帰る沖田先生、それを追うように留学を決意する井川先生に、柴田さんが着いて行く!」です。(奨学金の問題はおいといてください・・・)
沖田先生に幸せになってほしい!そして、壮大、救われてほしいです。

HTさんの言われてるように、私も完全にアライフの状況、沖田先生と、木村拓哉が重なって見えていますw

HT
2017年3月15日23:44

デイジー様、こんばんは。

>>これも「Back to the basics」ですね。

ほんとですね。「初心に返れ」簡単なようでなかなか難しいんですよね、これが。
今読んでいる白洲正子の「世阿弥」でも初心の大切さを説く下りがありまして、
何歳になってもどんなに踊りが上手くなっても、折に触れ初心に戻ることで更なる
高みを目指せ、と。
一心と一光の関係性が木村と周りの人たちのそれと重なって見えたり。

ヒロインが他の方だったら、は私も常々考えてしまいます。
相性ってありますよね。人と人ですもん。
表現するニュアンスのちょっとした違いは大きいはずですし。
デイジー様のハッピーエンドは私と同じですね(笑)
壮大はきっと沖田と深冬に救われる気がします。
沖田は・・・沖田の幸せは今のところ患者を救い、沖田の「精神上の遺伝子」を
未来につなぐことにありそうですね^^;

沖田も木村も道なき道をゆく人、輪の真ん中に立っていても染まらない人。
それが宿命なのかもしれませんね。

nophoto
ともりん
2017年3月16日8:30

数年ぶりにコメントいたします!
アライフ第9話の父息子のシーン、なんというかただ涙が溢れてしまう心に深く沁みる場面でした。うまく言えないことを文章化してくださるの、ありがたいです!

さて、深冬。ですが、個人的に今闘病中でして、そこからなんとなく感じることを。。彼女に何故か色気は微塵も感じないのが不思議なんですが、ただ、、怖くて泣いたり、遺書みたいの書いたり、思い出作ったり、、、で周りを振り回している姿は深冬のキャラクターとしてだけでなくて、患者としてとてもリアルだと思いました。結局自分のことしか考えてない!そう!それが急性期の患者のリアル。。でもって、それに対峙していく医者のありかた、をある意味物凄く深く描いてるな、、、と。あの意味不明の深冬設定に、つくづく共感してます。、、
にしてもあと1回とは˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚
心して観ようと思います!

HT
2017年3月17日23:06

ともりん様今晩は。

深冬の情緒不安定は急性期の患者のリアル。
余命宣告まで受けてしまって病状の深刻さはよくわかっている。
彼女の不安定さと向き合う沖田たち。
徹底したリアルさの裏付けがあるからこそ、現場の方々にも共感を呼ぶ。
・・・なるほどなぁ。その通りかもしれませんね。
ただ、彼女の設定はそれだけじゃ説明がつかない気もします^^;
告知を受ける以前からかなり意味不明な行動をとってましたし、いくら辛いからといっても夫にぶつけるべき思いを沖田にぶちまけ、でも最終的には家族と病院を選ぶという
あくまでも冷静な判断がなぁ・・。
いよいよ最終回ですね!
最後に「なるほど。そうだったか!」とストンと着地できますように。
楽しみですね!

nophoto
ともりん
2017年3月18日12:06

HTさま、こんにちわ。

無理がある…ですね、それはそのとおりです。なぜ元カノ設定意味ある???です。
ただ、あんなに泣いて主治医に言えるって、、理想の医師と患者の関係です。夫やこどもには絶対に涙は見せられないので…わたしも。
沖田先生が主治医だったらなぁ、、、と真剣に真実に痛切にそう思って一緒に泣いてカタルシスで癒されてます。笑。なのであの後けろっとしている深冬先生も妙に分かる気がしたり…めっちゃ患者目線だけなのでかなり偏った見方かもしれませんが。

先ほどブランチで中の人も、もう終わりなんだな…と言っていて切ないですが、シーズン2要望していきますー!

nophoto
裕子
2017年3月19日12:55

HT様、

いよいよ今夜で最終回ですね。
HT様のコメントが読めなくなるのがとても寂しいです。

ともあれ今回のドラマは沖田、壮大、井川3医師そして柴田オペナースの
印象が強くて肝心の「愛しいひと=深冬さん」の影が少々薄かったでしたね。
BBSの感想を読んでもそう思いました。
でもいかにも病院長のひとり娘で世間知らずのちょっとばかり鈍感なお嬢さんという感じは出てました。竹内さんの持ち味かも知れませんね。

沖田先生のまだ未熟な面も見れて、面白かったでした。なかなかこんな設定はないので(笑)。
9回で一番良かったのは母親を救ってもらった少年が沖田先生に自分も医者になりたいと言ったときの沖田先生の嬉しそうな顔!もしかしたらこのシーンがこのドラマの最大の目的だったかも。
そしてその嬉しそうな顔を柴田ナースと井川医師に見られたと思った直後に真顔に戻るところ、最高!
ほんとに木村さんは微妙な感情の段階を表情であらわすのが上手いです。
深冬さんの手術法を見付けたときの「0ではなかった」という時も、彼の安堵感が見ている側にもハンパなく伝わってきました。
本当に上手です。

私はいつも木村さんの演技はモーツアルトの曲のようだとおもっています。
決して大袈裟に進まず、ひとつひとつの感情の諸段階が細かく繊細で、だから
自然なのだと思います。AからBにすぐ様行かず(普通の俳優のように)A~A´~A´の2からBへの移っていくのでだから自然なのです。

ある指揮者がモーツアルトの曲を振るのがもっとも難しい。振るほうが一生懸命に練習しました、と聴衆に思わさせてはいけない。あくまでも全然練習などしなかったと自然のままに振っているんだと思わせないといけない。そういう具合に練習しないとならないので難しいだと。
なんだか木村さんの演じ方を連想してしまうのです(個人的な意見ですが)。

白州正子さんのご本、紹介して下さった有難うございました。
私も白州さんの「風姿花伝」は昔から読んでました。
その時「初心わすれるべからず」というのは初心者だったころの自分の
未熟さを忘れるな、という意味だと知りました。
千利休の「稽古とは1より習い十を知り、十よりかえるもとのその一」
にも通じるものがあるように思っています。
なにしろ芸の道とは道遥かということでしょうか。

その意味でも木村さんのこれからがすごく楽しみです!
最終回こころして受け取ります。
そしてHT様のご感想を楽しみに待っています。

HT
2017年3月20日16:40

裕子様、こんにちは。

沖田先生はたぶん木村拓哉の生き方まんまを写したキャラクターだと思います。
沖田先生の少年へ向けた笑顔は、彼自身の笑顔とイコールなのです。
モーツァルトの曲の構成は、山崎努氏の
「木村は一秒をものすごく細かく分けて演じている」に通じるかと。
しかしどんなに細かく分けても0と1の間には無数の隙間が空いてしまう。
そこを感じさせないのが彼の天分かもしれません。

白洲正子さんの「初心」
子供から少年へ、青年、そして壮年をへてやがて老境に至る。
その年齢ごとに「初めて出会う心境」で芸と向き合う。
その年齢ごとに子供の頃の素直で自由奔放さに立ち戻ること。
それができる人だけが散らぬ「花」を保ち続ける。
・・・だと解釈したのですが、どうでしょうか。
芸能界という特殊な環境の中でその時々に味わうべき心境を味わってきたからこそ、
今の円熟の入り口に居る木村拓哉が在るのかもしれないですね。