夜の巷を徘徊する。

ふんわりと柔らかい毛布にくるまったような幸せな気持ち。
夜、深い時間に見たから余計そう感じたのかも。

夜。
いつも歩いてる道が、場所が、まるで違うように感じたりする。
雑多な色彩が消え、家の明かり、コンビニの光、街灯が照らす部分だけが
くっきりと浮かび上がる。
誰かがそこにいることが、ほっとする感じや安心感に変わる時間。
そんな時間だからこそ、二人の距離感が特別なものに感じるのかもしれない。
マツコが、出会った人たちにかける言葉は他の番組より優しく見えるし、
木村の佇まいも声も、キムタクよりは木村拓哉のほうがしっくりくる。
だから夜二人に出会った人たちは、マツコの隣に寄り添うように立っている男性が
『あの』キムタクだとすぐには気づかない。
眼に映るディテールがより限定され、注意深く見なければ見過ごしてしまう、夜。
その気安さを、木村自身が一番楽しんでいるように私には見えた。
マツコは、彼の腕に手を回してすごく女子っぽく見えるところもあれば、
移動の車中や蕎麦屋での会話では、元同じ学校出身の気安さか?
45歳の男性二人のしみじみした会話になっていたり、女子と野郎の間を
行きつ戻りつして見えた。
木村はそんな彼女と彼を、変わらぬスタンスでやんわりと受け止める。
ああ・・・なんだかすごく、彼の温かみをリアルに感じるんだよね、この番組。
他のどれでも感じたことのないような。
寄りかかってみたくなる。
あの腕に抱きしめられてみたくなる。

去年4月、無限の住人のキャンペーンで初登場した時から
木村とマツコの間に流れる空気感は変わらない。
「心配なんだよ。」って、最初に言った言葉がそれだったっけ。
予感が当たったのか?
マツコは秋にダウンして木村はLINEで「水を飲め!」とメッセージを送った。
蕎麦屋でビールを一気飲みして、いったんため息ついちゃうと止まらないのよ、
とこぼすマツコに「やばいよ、やばいよ。」と返す木村。
出川さんみたい、って笑いで流してたけれども。
木村とマツコがどれくらい深い話をしたのかは分からないけれど、気遣ってる感じは
すごく伝わってきて、なんだろうなぁと思っていた。

それが、昨日のワッツを聞いて、あっ。と思った。
「また今度ね。」と言っておいてそのままが嫌だから、マツコと食事した話。
マツコは女装でなく同い年のおじさんの姿で来たと、笑い崩れてたけれども。
木村とマツコの共通点、ここかぁと気づいたのだ。
木村にとってのキムタクはマツコにとっての女装の姿と近いのかもしれない。
若い頃『キムタク』の存在と向き合って四苦八苦していただけに、
一人歩きする『マツコ』のイメージと45歳の等身大のおじさんのギャップと
その葛藤がよく分かるのかもしれない。
だから木村は、『マツコ』にキムタクでなく木村拓哉として寄り添うのだろうか。
意識的にしろ無意識にしろ。

大吉を求めて神社を徘徊するおっさん二人の夜は限りなくやさしい。

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