毎回Twitterで感想を拝見するのが楽しみな書き手の方、お二人。

https://note.com/koudy/n/nda8955b69ff7

Mr. cheesecakeのシェフ、田村浩二氏。
この方のチーズケーキを何度かお取り寄せでいただきました。
こっくりと味わい深いのに後口が爽やか。
何よりもその香り。
トンカビーンという杏仁豆腐みたいな香りの香料が効いてます。
クマリンという成分の発する匂いなのですが、匂いフェチの私にはたまりません。
その田村シェフの、グランメゾン東京の解説文。
素晴らしいです。
毎回感動しております。

もうお一人、うずらさん。

https://mobile.twitter.com/caille2006

この方の知識、描写力、そして確かな舌。
ドラマをより深く、多面的に楽しむことができます。
とても知的な文章を書かれる方。


・・・正直、こんな素晴らしい文章を読めば、自分の考えていたことが全部、
ずーっと深い部分まで解説しつくされてるので、もう十分かなぁと。
ぜひぜひ皆様、目を通してみてくださいませ。



7話は「家庭と仕事のバランス」という永遠のテーマを
「プロの味、母の味」の対比と絡ませながら描いていました。
人を動かす料理を作る天才・尾花夏樹が、素人の母の味に負ける。
まぁアメリーはまだ子供ですからね。
子供の舌は未発達だから、彼女がもう少し大人なら結果は違ったかも。
更に尾花と相沢がエリーゼの為にキノコ料理を作るシーンで、同じテーマが
再度強調されます。
尾花が「ありえないほど塩っぱい」と感じた味付け。
相沢は「エリーゼにはこれくらいの方が良いんだよ。」と答える。
エリーゼはアメリーの、相沢はエリーゼの為だけに作る料理。
エスコフィユ時代、絶対美味を追い続け人の意見を聞き入れなかったという尾花。
もし今もそのままで居たら「お客様のことをよく知っている料理人は強いよな。」
の言葉は出なかっただろう。
初期のエスコフィユでは料理人の家族を呼んでパーティを開いたりもしたらしい。
その時の料理はきっと、プライベートな空気もあり、
参加した一人一人の笑顔のために
趣向を凝らした皿が並んだことだろう。
三つ星を追いかけ始めてエスコフィユは変わってしまった。
そしてアレルギー食材混入事件。
落ちぶれて荒れ果てた3年間を経たパリで尾花は倫子と出会った。
彼女の涙で料理人の喜びの原点に立ち返った尾花。
自分でなく人の為に三つ星を獲ろうと奮闘する尾花。
日本人の舌に合う日本の食材の良さを追求しようと決めた尾花。
お母さんが子供に作る家庭の味とは違う次元だけど、
だれかの「美味しい!」の笑顔の為に
料理をする時、目指すものは同じところにあるのかも知れない。

そんな「今の尾花」は「過去の尾花」をどう感じているのか?

エリーゼと別れ孤軍奮闘でアメリーを育てた相沢。
原因の一端はエスコフィユ時代の自分にもある。
そして全力で守ってきた愛娘とその父を引き裂いたのは、今の自分の力不足。
「すまない。」
静かにドアから出て、壁に向かって拳を突き出そうとして思い留まる。
悔しさ、不甲斐なさ、そして過去の自分へのどうしようもない怒り。
「クソぉ!」
全身で絞り出すような、腹の底から湧き上がる激情が声となって響き渡る。
尾花は変わった。
しかし過去の尾花がどこまでも追いかけてくる。
お前は何をしてきた?
不幸ばかりばら撒いてきたお前が、今更だれかを幸せになんてできないさ、と。

だから空港の別れのシーンが余計に刺さる。
相沢と復縁はないと断言してきたエリーゼが「待っている。」と。
そして尾花に「グランメゾン東京はエスコフィユを超えたわ。」と。
今のあなたは昔のあなたより素晴らしい。
エリーゼはそう告げたのだ。
「だれかの笑顔のために」料理する喜びを取り戻したから。
倫子と京野、相沢というかけがえのないチームが居てくれるから。

「今の尾花、最強じゃない?」
と相沢は京野に言った。
その京野が唐突な倫子への告白。
倫子・尾花・京野の正三角形のバランスが崩れていく予感。
どうなるのか、どうするのか。
しかし私には京野の言う「好きです。」が男女のそれには思えないのだけれど。

もう一つのチーム、gakuの丹後・平古。
グランメゾン東京を超える8位に輝いたが、影には江藤オーナーの暗躍が。
彼に言わせれば「票の取りまとめは当たり前のこと。実力のうち。」だろう。
が、自分の腕だけで闘いたい丹後はどう思うだろう。
丹後と平古は江藤と決別し店を立ちあげそうな気もする。
芹田に「うちの厨房を見ていけよ。」と案内し、料理のファイルを見せる丹後は、
鰆のレシピを流出させたと謝る芹田を笑い飛ばした尾花たちに重なる。
「俺は伝説のレストランの立ち上げメンバーですから。」と胸を張る芹田に
複雑な表情の平古。
彼の心の一部はまだ、尾花と共にあるのだろうか。
芹田と平古はもしかしたら若い頃の尾花にそれぞれ似てるのかも知れないなぁと
ふと思った。

尾花はどうしようもなくダメな男だ。
家庭向きではないし、女を幸せに出来そうもない。
けれど不特定多数の人を「笑顔に」できる「人を動かす力がある」。
そして芹田と平古のプライドと前向きな姿勢を見ていると、人を育てる力もある。
尾花本人はたぶん気づいてはいないだろうけれども。

コメント

nophoto
coco coro
2019年12月5日17:40

HT様

田村氏とうずらさんお二方のTwitter、本当に深く鋭い分析と解説でこの作品を更に味わい深いものにしてくださっていて毎回楽しみに拝読しています。

さて、第7回の放送を我が家では息子と夫も一緒に観るという珍しいことになってしまい、リアルタイムでの視聴後暫くこの回のテーマ『家庭と仕事のバランス』について夫と議論するという疲れる場面が展開しました。
「母の味とプロの味」については母親と料理人のどちらに自分の嗜好が合うかということと自分の味の原点が家庭料理であることは分かるが両者の優劣を結論づける意味が無いとも言ってました。特に幼い子供の母親への思慕の情を思うと何だかなぁと思ったそうです。

ただ、エスコフィユで相沢が家庭を顧みず料理だけに打ち込んでいたことが尾花だけの責任というのは納得できないと。尾花の高圧的態度はオーナーシェフとして問題だし店全体やスタッフに対する責任はある。でもプロの料理人としてそこで働き三星を目指していくなら並大抵の努力では難しいことは当然理解できたはず。家庭人としての相沢を求めるなら、三星を取れなかった時こそ彼にこれから料理人としてどう生きるかを選んで欲しいと尋ねるべきで、一方的に全てが嫌になったと言って娘を置いて出ていくような人間に自分の全てを料理に捧げて全てを失った尾花(たとえ女に手が早くどうしようもない男だろうと)を非難をすることは違うと思ったそうです。店が潰れたのは暴力もあるだろうけど、アレルギー食材混入事件は料理店としては致命的だからなとも。
誰だって本当に正念場という事態に追い込まれる時があれば仕事に没頭しなければならない時があると若い頃を思い出して言ってました。夫は海運業界大不況の時にそれこそ会社が倒産するかもという時代を上司と二人休日返上で働き海外出張し続けて仕事を取ってきた人。好況期に入社した部下達にもいろんなタイプがいて働き方も様々。でも自分の能力を高める努力をする人間はきちんと周りも見えているし、自分にとって大切な家族を蔑ろにはしないとも。
夫は仕事人間ですが、定時退社をモットーに休日は楽しく過ごす人です。でも恐らく料理人の世界は目に見えない努力が必要な世界で、ある意味各人の意思で自分の目指すレベルを追い求めるのだろうから、単純に労働時間云々を他人が口出し出来ないとも。これは芸術家やプロスポーツ選手にも言えることだと。
その上京野の告白に「何故このタイミングで男女の感情を持ち込むかな?」と疑問視。ただ来週尾花の師匠が登場するのがポイントになるはずとも。ちなみにアメリと相沢さんの別れの場面では一番涙を流していて息子から呆れられてました。

息子とは翌朝この話題に。料理人の世界はよく分からないけど、全員が尾花や丹後みたいな才能があるわけないから、自分がどういったポジションで料理人として生きていくのかを考えればその努力の仕方も本人が決めることで他人が口を挟むようなものではないと。料理の世界、ミシュランの星の数なんて自分には無縁だけど、ヨーロッパでのサッカーリーグとかを見るとチームの特性(まずは何より資金力、スター選手の数、ゲーム展開の戦略等)がはっきりしていて、選手は自分の力量と年齢とを考えてチームを渡り歩く感じ。料理人は最初は名だたる店で修行しながら最終的には自分の店を持つのが夢なのかな。だとしても一人でやり続けるのは難しいだろうから、後継者を育てることも考えなくてはいけないはず。そうなると尾花って結構ちゃんと人を育てる術を持ってるよ。あの弁当とかナイフを買ってあげるとかちゃんと人を見て手を差しのべてるからね。女癖が悪いって言われててもそんな場面出てきてないしと。

私自身は尾花の相沢への「ほんとにごめんな」という言葉とあの叫びに胸が苦しくなって涙が出ました。尾花さん本当に変わったよねって。
今回は尾花の相沢を見る眼差しが切なくて苦しくて。
でもこれからアメリの「尾花くん」が聞けないのは本当に寂しいです。

と言った感じで久々にドラマのことが家族の話題になった回でした。

そして今朝中村哲さん死亡のことで話した時に「世界にはミシュランの星なんて関係なく生きるための水さえない国もある。お前の好きな木村が演技をしたり、歌を歌えるのも、俺たちがレストランで美味い料理を食べられるのも平和であってこそだ」と涙目で言って仕事へ。

nophoto
裕子
2019年12月7日12:57

HT様

書き込ませていただいのですが、どういう訳か、消えてしまいました・・・
またその内に改めて書かせていただきます。

nophoto
裕子
2019年12月9日23:07

HT様

気を取り直して居るうちに回はどんどんと深みのある展開になって、
這い上がれない状況になってしまっています。

前回は確かに「母の味、プロの味」でしたね。
あれだけ自信のある尾花が母の味に負けた。
「お客様のことをよく知っている料理人は強いよな」
これは今回への繋がっていました。

それにしてもあちらのママは強い(笑)。
10位だったんだからここはエリーゼが折れる、と思っていましたが、
見事はずれました。でもママと一緒に巴里にいくのはもしかしてアメリの
選択だったのかも知れないなと思いました。
昔ある知り合いのドイツ人ママが「私たちは子供にはいつもいくつかの選択肢
を与えて自分で決めさせる。自分もそう育てられたし、人生は選択の連続だから」
アメリの気持ちを尊重してのことだったら仕方ないかな、とも。

<尾花はどうしようもなくダメな男だ>
そしてどうしようもなく魅力的な男ですね。
あの皆様絶賛の会場での表情!は勿論ですが、エリーゼとの頬キッス、
なんて自然なのでしょう!友人があまり自然なんでびっくりした、
いつもやっているわね、と。たしかヨーロッパでは両頬に、アメリカでは方頬だったと記憶しています。なかなかあのように自然にはいかないものです(キッパリ!)

また消えてしまわない内に終わりにします。
感動の第8話、H様、よろしくお願いいたします!



HT
2019年12月10日13:23

coco roco様。

家族で議題に上がるドラマって珍しいんじゃないでしょうか 笑
自分らはどうしてもファンの目線で見てしまうから第三者目線として家族の感想を
聞けるのは幸運だし、思わぬところでその人の人生観がにじみ出たり。
正直、私もエリーゼは一人でアメリを育てられるのか?と疑問です。
相沢が家庭を顧みなかったのも、その原因が尾花(とその店)にあっても
子供を放り出して失踪は、育児放棄じゃないの?と思ったり。
三年前ってたぶん一番手のかかる時期のはずなんですよ。
そこを旦那と義理の母に丸投げして、ある程度聞き分けの良くなった年頃に
「はい!こっから先は私が〜」って事じゃん?と思いました。

グランメゾン東京の熱い支持層は実は30−50代の男性のように思います。
尾花と、彼の背負った諸々の十字架に「分かるよそれ!!」と共感し、
解決していく様に癒され、明日へのエネルギーをもらう。
尾花夏樹は無数に存在するこの国の悩める労働者の希望の星なのかも。
いつでもやり直せる。
どこでも始められる。
なんなら、最初から。
自分を信じる気持ちさえあれば。

息子さんの意見も的を射てると思いますし。
10代20代男子に尾花夏樹でなくキムタクはどう見えるんでしょうね?

HT
2019年12月10日13:34

裕子様。

そうなんですよ。
アメリの選択だと考えると腑に落ちます。
私も10位なんだから相沢に任せてあなたはパリに帰れば?と思いました。
だって一度は育児放棄したわけだし。でもアメリが「ママといたい!」と言えばね。
本当は相沢に一緒に帰って欲しかったと思う、エリーゼは。
言い出せなかった本音を、アメリに代弁してもらってたけど 笑

エリーゼとのお別れのキス。
おお!ナチュラル!!!と私も思いました。
照れが無いんですよね。歴代ドラマのキスシーン全てそうでした。
彼の周りとの接し方を見てて、スキンシップに慣れてるなぁと。
人目のあるところで他人に触れる・触れられることに日本人は慣れてない。
更に「もし拒否されたら・・・」って感情は必ずあると思うんですよ。
彼はごく若い頃から人に愛され・羨望される環境に居たのもあるし、
あの外見と物腰は拒否されたことなど無かったのだろうな〜、なんて。