出来たな。最高のチームが。

京野の言葉に瞳を潤ませる尾花。
それは尾花の悲願であり、京野の希望でもあったはず。
チームの誰よりもお互いの事を知り、あらゆる感情を味わっただろう二人。

京野は2度と人に食べさせる料理を作らないという誓いを破る。
倫子の言葉によると「ボンヤリした味」の鹿肉のロースト。
祥平の曖昧なリアクションにキレた京野の言葉。
「俺の料理、何も感じないだろう?」
「お前には才能があるのになぜ料理人を辞めるなんて言うんだ!?」
才能。
やる気のあるなしや人間性とは関係なく、それは存在する。
残酷に。はっきりと。厳然と。
京野が、結局は尾花とやろうと決めたのは間違いなくそこで、
倫子同様、京野もまた尾花夏樹の才能に惚れ込んでいる。


相沢は祥平を許さないよと言った。
やるべき事があっただろう?逃げ回るんじゃなくて。
そりゃそうだ。
コンタミ事件のせいでエスコフィユは解散し、妻と娘と離れ離れになったのだ。
でも私は知っている。
尾花夏樹とは絶対に手を組まないよと言いながら、
いつの間にかグランメゾン東京の仲間に引き込まれている彼を 笑

なぜ尾花はそこまで祥平に拘るのか?
「平古祥平の料理には人を動かす力がある。」
答えはいつもシンプル。

メイン料理の開発に祥平を指名した尾花。
二人が夢中になって料理を作る姿を横目でチラチラ見る相沢。
そこには祥平のミスを許せない気持ち以外のものがある。
つい目が行ってしまい表情が曇るような…嫉妬に近いかもしれない。
会心の作の前菜は、目の覚めるようなグリーンの、クスクスのサラダ。
真っ白い皿に盛られたそれは、食べることの出来るアート作品のよう。
目にも感動を与えるそれを尾花が味見する。
焦らすようになかなかリアクションしない彼を、息を詰めて見守る相沢。
ついに尾花が天を仰いだ。相沢の歓喜。
「相沢さん、尾花さんの要求に応えられなくて苦しんでましたから。」
祥平の口から語られる過去。

倫子が看破した通り、尾花の価値観は「美味いか、美味くないか。」のみ。
嘘も忖度もない。
才能ある人間が躊躇いもなく言い放つ、真理。
その身も蓋もなさに腹を立てながら、皆、尾花の周りに集まっている。
図らずも相沢が言う。
「エスコフィユが壊れなかったらグランメゾン東京は無かったんだよね。」
不思議な巡り合わせ。
いや、もしかすると必然だったのか?
その想いは全員の中にあるような気がする。

リンダはゴシップ紛いの記事で祥平の人生までも壊そうとする。
祥平はgakuを追われる。
しかし尾花が彼を拾う。
リンダは尾花を脅すが、彼はびくともしない。
そして美優はグランメゾンを再訪する。
萌絵はモンブランアマファソンをどうしてもサーヴ出来ない。
(第4話では実は尾花がモンブランをサーヴするはずだった)
尾花は美優にそれとなく祥平の存在を伝える。
美優は壁越しに正直な気持ちを伝える。
・・・こんなにピュアでロマンティックなシーンをドラマで見るのは久々だと思った。
美しく哀しく、でも力強い、恋する二人の瞬間。

調査員すら訝しむリンダの、祥平への執着。
メンツを潰された怒りだけとは思えない。
「私は尾花夏樹の腕に心底惚れ込んでいますから!」
高らかに宣言した倫子。
リンダの顔に微かに浮かぶ敗北感。
料理人やレストランをペンの力で潰すほどの政治力を持つ女。
かつては尾花の恋人だった女。
美しく聡明で無敵に思える、誇り高き女。
しかしリンダは、チーム・グラメの一員にはなれない。
コンタミ事件の真相を探るうち、心のうちに嫉妬が芽生えても不思議じゃない。
尾花が大切に育てる祥平。
尾花が片腕となって支える倫子。
尾花と、一つの目標で結ばれた仲間たち。

リンダは尾花が倫子に三つ星を【プレゼントする】と思っているようだが、
少し違う気がする。
彼は「あんたに三つ星を獲らせてやるよ。」と約束した。
ずっと引っかかっていた、【獲らせてやる】
「獲ってやる」でなく「獲らせてやる」なのだ。
倫子は、自分には料理の才能が無いと思い込んでいる。
尾花が中心に居るから三つ星を獲れるのだと。
尾花は、どうだろう?

「星は店に着く。」
リンダも江藤オーナーもそう断言した。
才能あるシェフより資金力。
人よりお金とハコがモノを言うのだと。

江藤は丹後を解任する。
平古を失い、自信を失った丹後に三つ星は獲れないと判断した。
江藤は、嫌な奴だが悪人では無い。
彼には夢がある。
実現のためには手段を選ばない。
つまり、彼なりのやり方で店を愛している。
丹後の渾身の新作を口にした時の、泣き笑いの顔。
三つ星を焦った自分の愚かさに、気づいたときにはもう遅い。
去り際に聞いた「俺の料理はどうだった?」の一言に、江藤は答えられない。

丹後はいろんなものを失ったけれど、自信を取り戻せたようだ。
祥平がgakuを辞める時に送った言葉。
「お前の料理、最高だったぞ。」
「ばかやろう。」
元々は尾花同様、自分の力を、仲間を信じる、誇り高き料理人。
丹後はどうするのだろう?
新しい店を立ち上げるのか。
その時、誰をパートナーに選ぶのだろうか。

才能と、それを信じる人たちの夢とが合わさった時、奇蹟が起きる。

グランメゾン東京のテーマはそこじゃないだろうかと思うし、
それを実感できるラストであってほしい。

コメント

nophoto
coco coro
2019年12月27日18:03

HT様

いつ読んでも素晴らしい内容で、その通りと頷くばかりです。

尾花夏樹の料理。
フレンチの無限の可能性を信じ、世界中のあらゆる食材を使って最高の一皿を作ろうとする彼の料理人としての姿勢はどんな状況でも変わらない。

コンタミ事件で全てを失ったけれど、倫子さんと出会い昔の仲間と一緒にグランメゾン東京という最強のチームを作って倫子さんに三つ星を獲らせるために出来ることは全てやろうとしている

祥平を庇ったのも彼の才能を信じたから。
だからこそメイン料理の開発を祥平と一緒にやり始めた。
京野が料理人としての自分を諦めた気持ちが解ると倫子さんは言ったけど、それを最も身近で強く心に刻んでいたのは尾花だったはず。そんな京野が祥平のために料理を作るということがどういうことかを尾花は知っている。
どんな世界でも才能の有無って残酷でシビア。

料理のことしか頭にない尾花だけど、人の気持ちをちゃんと理解していることは美優に対する細やかな気遣いと祥平のことを然り気無く知らせる言葉でもわかる。

今は倫子さんに三つ星を獲らせるためだけど、これからの料理人としての尾花はどうしたいと思っているんだろう。それが最終回に繋がっているのかな。

いよいよ明後日は最終回。
今日の番宣で少年のような木村さんが「最終回、やられました。倫子さんが本当に格好いい」と言われていたので、ますます楽しみです。

グランメゾン東京という最強のチームが各々の星をつかんだ最高のラストになりますように。


HT
2020年1月1日23:17

こんばんは。

最終回まで見て。
キレイに伏線を回収し、私たちの思いに素晴らしい回答を出してくれましたよね。
倫子と尾花と京野を中心に、グランメゾン東京のメンバーだけでなく、
gakuも含めて、全員が同じ目標へ走っていく未来を期待させる終わり方でした。
「教場」のオンエアまでに最終回の感想もアップしますのでよろしくお願いします。